よくみたらタイトルにBEGINNERSの文字が
★★★★☆
一応言っておきますが、この本は「漫画」です。
サルトルの生涯から、その思想とはどのようなものであり、どのように変遷してきたか、そしてその諸作品とそこにこめられた重要なキーワードが漫画で解説されており、内容は簡潔にして的確、かつかなり突っ込んだ部分も書かれており、入門書としてはかなり優れた本です。決して漫画となめたものではありません。
ただこの本はあくまで入門書、ガイドブックなのでこれ一冊ですべてがわかるといったものではありません。そこでサルトルに興味を持った人のために、主要作品のガイドや年譜、用語集や参考文献のリストが付録として付いています。
とりあえずサルトル哲学に興味がある人へのきっかけになるだろうか?
良くも悪くもエキセントリック
★★★★☆
サルトルの著作の中からキーワードを抜粋し、分かりやすく解説したもの。ページは左開きで文字は横書き。
ほとんどがイラストによる図解だったので驚いた。イメージでいうと、マンガで読む○○に近いかもしれない。
これがまた洋物な感じで、良くも悪くもインパクトがある。かなりエネルギッシュな雰囲気を醸し出している。
新書や文庫でよく目にする哲学の入門書は、入門なのに難しいというイメージがあるが、本書はかなり異端の部類だ。
(だからといって自分はすぐには理解できないが。)
本書は、直感的になんとなく分かった気にさせてくれて、興味を持つきっかけになった。
一方で、活字を追いながら静かに思索に耽りたい人は、本書だと気に障るかもしれない。
マルクス主義を巡る論争に疲れた人へ
★★★★★
現在の状況で思想に興味があり勉強していく、というと行き着く果てはマルクス主義周辺の論争、と相場が決まっている感は否めないと思う。だが、その先には何があるのか、という問いに行きつくまでに、難解さと現代との思想感の乖離に疲れてしまい、哲学から離れてしまうのはあまりにももったいないことだと思う。
サルトルはマルクス主義以後のポスト近代、現代を生きる私たちが肌で感じるような、ソ連崩壊前の時代の思想と我々自分自身の問題との明らかな差異のようなものを埋めるような思想を持っており、読む人間の「自分の思想感」のようなものの形成に役立つと思われる、埋もれさせるにはもったいない著作がある。
この本は挿絵や例を含んだカットを多様してわかりやすくサルトルの生い立ちと思想の基本の概要に触れ、『存在と無』、『嘔吐』、『蝿』の各作品のテーマを取り上げているので、それらに興味があるが、どれから入ればいいのかわからない、という人にもおすすめしたい。
ほかのレビューでも触れられているとおり、これらの本は思想を勉強する学生にとっては結構値が張るので、この本でアタリをつけてから購入するのがいいかと思う。
哲学入門の入門?
★★★★★
~哲学に興味をもっても、細かい字でびっしり書かれた専門用語に辟易して諦めの念とともに本を閉じる、という経験はないだろうか?
この本は文字や図が楽しげにレイアウトされ、とりあえず読んでみるか、という気にさせてくれるだけでもそのへんの哲学入門(とされている本)よりも間口が広い。読み終わったあと、哲学にたいしてわずかなとっかかりが生まれ~~るのがうれしい。
訳者あとがきの「これ一冊で”わかった”と思ってもらってはちょっと困る。というよりこの本はあくまできっかけであって……」という一文に、この本が哲学の冷やかしでないことがわかる。~
サルトル解釈
★★★★★
~ サルトル哲学の入門書というより、作者がサルトルの哲学をどう捉えているかという解釈の本になっている。しかもそれがわかりやすく面白い。結果、きわめて完成度の高い入門書になってしまっている。漫画入りの躍動感ある内容がサルトルの哲学ともよくあっているのかもしれない。
~~
もちろんここに書かれてあることがサルトル哲学のすべてではない。しかしこれを読むと、まだまだ彼の哲学は読むべき価値があるように思えるのだが、インテリの消滅とともにサルトル読者もすっかり消えてしまった。まあ共産主義の没落とも関係があるのかもしれない(サルトルは旧ソ連のチェコ侵入まで共産主義を若干の留保付きで支持していた)。また、日本~~における彼の著作物を並べてみると、もう結構昔の人なのに手軽に手に入る本がほとんどない(新潮文庫の「水いらず」ぐらいだ)。これでは若い人は買わないよ、といいたくなる。だいたい彼の代表的哲学書である「存在と無」が現在新刊で手に入らないのは全く不可解だ(大学の図書館にもなかった)。誰か新訳で出してください。しかも文庫で(岩波か筑摩さん、~~おねがいします)。
~~
しかしこの本が出たことでまた少しはサルトルファンが増えるだろう。何度も言うように、世間が思ってるほど彼の哲学は古くない(まあ新しくもないが)。ニーチェやハイデガーと比べて入門書の類いが少ないのも意外なのだが、これはそんな欲求不満を満たすのにももってこいである。しかしあれだけ時代の寵児となった当時のほうがおかしかったのかな・・・。~