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相対性理論 (物理テキストシリーズ 8)

価格: ¥2,205
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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過小評価されているが、実は良い本 ★★★★★
 本文215ページのうち、特殊相対論が110ページを占めており、一般相対論まで解説する本としては、特殊相対論の分量が多い。そして、特殊相対論の記述が優れている。アインシュタイン方程式を得るのがp.170であるので、それから得られる結果の解説が少し物足りない。宇宙論には触れない。種々の方程式は、まず変分法を使わないで導き、次に変分法によって定式化している。
 まず第1章「特殊相対性理論の基礎」だが、pp.1,2で、Newton力学の運動の第一法則は、自明でない慣性系の存在を原理として主張したものだと説明している点と、pp.7,8での「光速度不変の原理」の説明が優れている。また、時計のパラドックスやFresnelの随伴係数についても触れている。次ぐ第2章「テンソル算」では、一般のローレンツ変換と、一般座標変換でのテンソルおよび擬テンソルの変換則を説明する。本書は、密度量を太文字にしているのが良い。この章は、類書のそれより丁寧で詳しいだろう。
 第3章は、「相対論的電磁気学」,第4章は「相対論的力学」である。電磁気学の方が力学より先なのが良い。Maxwell方程式の書き換えには2節割いて、4元ポテンシャルを使った書き換えと、使わない書き換えをしている。この部分は類書より丁寧である。また、電磁場のエネルギー運動量テンソルを“導出し”解説している点も良い。物質中のMaxwell方程式も、相対論的に書き換えている。第4章では、まず普通にNewton力学の修正をした後、Newtonの運動方程式を、(4元運動量の固有時微分)=(4元力)と、拡張し、熱により“静止”質量が変化する例(4元力ベクトルが、4元速度ベクトルと直交しない例)を挙げている!この記述は珍しい。また一般相対論に入る前に一度ここで、(荷電)粒子の運動方程式とMaxwell方程式を、変分原理によって定式化しているのも良い。
 第5章は「一般相対性理論」,第6章は「Riemann空間におけるテンソル解析」である。ここで共変微分を導入する。この部分で優れているのは、次の定理1を証明し、定理2を紹介しているところだ。定理1:計量テンソルおよびその1階,2階微分係数から作られ、2階微分係数については1次式であるスカラー量は、aR+b だけだある(a,bは任意の定数であり、Rはスカラー曲率)。定理2:計量テンソルおよびその1階,2階微分係数から作られ、2階微分係数については1次式である対称2階テンソルで、発散がゼロのものは、a,bを任意の定数として、a×(アインシュタインテンソル) + b×(計量テンソル) だけである。cf.ちなみに、この証明は、同著書の『一般相対性理論 (物理学選書 15)』や高杉征樹『よくわかる数学物理化学―中学の実力から大学教養レベルへ』などにある。
 第7章は「一般相対論的力学と電磁気学」,第8章は「重力の方程式」である。第7章では、等価原理(局所慣性系では、特殊相対論の方程式が成立する)の成立しない例を挙げ、コメントしている。第8章では、細かい計算が省略されている。しかし、変分原理からアインシュタイン方程式を導き、その流れで重力場のエネルギー運動量擬テンソル(アインシュタインのエネルギー・コンプレックス)を導出し、漸近平坦な時空について議論をしている。また、重力波についても、最低限の議論はしているし、Schwarzschild解を求め、光線の湾曲も説明している。宇宙論への応用はない。第8章は、物足りない気もするし、本書には内山 龍雄 先生のオリジナルなところもあるので、詳しくは同著者の『一般相対性理論 (物理学選書 15)』を参照すると良いだろう。cf.この本はもっと独自性が強い。本書は、この本への良い入門書でもある。本書の第4章までの知識で読める。なお、同著書の『一般ゲージ場論序説』は、ちょうど本書ぐらいの知識があれば読める(詳しくは私のレビューを参照)。
 全体的に評価すると、星は4.5ぐらいだろう(−0.5は、アインシュタイン方程式以降の物足りなさについて)。べつに分かりにくい本ではないと思う。過小評価されている理由の1つは、序にある「もし本書を読んでも、これが理解できないようなら、もはや相対性理論をあきらめるべきだろう」というセリフだろうが、この先生の著書・訳書の序文は(ほとんど)どれも強烈なので、気にしなくて良い。
コンパクトでいい ★★★★☆
記述が非常に簡潔なうえ演習問題もないので、この本だけを読んですべてを理解するのは難しいかもしれません。しかし著者自身自負しているように、たしかに手際よくコンパクトにまとまっているので、ほかの教科書を読んで理解したことを整理し直すときなんかには有用だと思います。
「この本が理解できなければ…」という前書きを本気にしなければ普通に名著なんじゃないかと思います。
そこまでひどい本でも無いと思う ★★★★☆
風間洋一先生の「相対性理論入門講義」を読んだあとに、読み始めました。結構辛口の評価が書かれていますがそこまでひどい本ではないと思います。ただ、若干の分かりにくさがありますので、そのあたりは佐藤勝彦「相対性理論」とランダウ「場の古典論」を参照して読むと良いかもしれません。
まじめな相対論の教科書 ★★★☆☆
本書は定評ある岩波全書の相対性理論:内山(岩波)の改訂版である。信頼度は十分であるがこれがなかなか分かりにくい。本書の内容をスムーズに理解するにはこれも定評あるが相対性理論:佐藤勝彦(岩波)と併せて読むとすっきりすると思う。そのため星は2つ減らした。相対論の基礎学習はそれで十分だと思う。あまり本をいろいろ読むのもいいが落ち着いてじっくり教科書を読み込むことも大事である。
これでは多分理解できないでしょう ★★☆☆☆
2回ほど読んだが、この本で初心者が理解できるとは思えない。
パラドックスにこだわりすぎて、わざと迷宮にみちびいているのではと思える。絶対座標系(もしくは観察者に固定した座標系)から離れられない一般人には、パラドックスはパラドックスとしてしか映らない。

共変・反変成分についての説明がどの教科書でもないがこの本にもない。斜向座標でもベクトルの長さを不変にするにはどうしたらよいか説明すれば事足りるのにテンソルの一般論を載せているが中途半端である。パウリの受売りと思えるような記述が散見される(パウリの本は徹底的に式の導出は省略されている)。
どうせ理解できないのであれば、最初からパウリの本を読んだほうがずっとましだと思える。
であるが、今となっては、ちょっと引くのには便利。