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リヴィエラを撃て〈下〉 新潮文庫

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「夢見る夢子ちゃん」が描いた理想の男性像。 ★★★★★
この著者の本を読むのは初めてだったのですが、他の皆さんもお書きになっているようにすごい小説ですね。一文一文がズシリと重く、気軽に読み進めることなど到底できません。アイルランド問題や国際政治についての基礎知識と相応の覚悟を備えた上で挑むことが求められます。それだけに、読み終わったときには清々しい充実感がみなぎります。

著者が女性だということに当初驚かされましたが、すぐに合点がいきました。この人はいい意味での「夢見る夢子ちゃん」なんだと。主要登場人物たちは皆、ルックスがよく、知的で、勇敢で、義理人情に厚い。男性読者からすれば「こんな男いるわけない」となるわけですが、これが女性視点での理想の男性像なのでしょう。著者は、そんな理想のイイ男たちによるハードボイル・サスペンスを、小説という虚構の世界で紡ぎたかったのだと思います。

余談ですが、本書を読むときのBGMにはやはりU2やクランベリーズなどのアイルランド系が相応しいです。ボノやドロレスの哀愁を帯びた叫びが、本書に度々登場するアルスターの風景と絶妙にシンクロします。
《国益》とは... ★★★★★
高村さんの作品は勢いだけでは読めない。
他の方も書いているけれど、集中して読まないと一文一文に込められた深くて
重い意味を見落としてしまうからだ。
それだけにこの作品も読むのは疲れるけれど、読後感は素晴らしかった。

《国益》という名の下に交わされる数限りない駆け引き。
それは時に裏切りであり、時に騙しあいであり、時に人の命を奪うことですら
ある。
その命が《国益》を脅かすとして奪われるものであっても《国益》を守るため
に捧げられたものであっても、失われた後は闇から闇へ葬られる。
でもその命の持ち主とはもちろん人間であって、その命の数だけの人生があり、
その命の持ち主の数だけの愛情や友情や郷愁や使命など様々な想いが詰まって
いる。
その彼らの生きた証を、ささやかでも誰かが伝えても良いのではないか?
それが手島やモナガンの思いだったのではないか?

《国益》とは一体何なのか? 誰のためのものなのか? かけがえのない筈の
命を数え切れないほど奪ってまで守らねばならないものとは何なのか?
そんなことを考えさせられた。

今この瞬間にも世界中のどこかで、そして日本のどこかで《国益》のために様々
な駆け引きが行われているのだろうし、もしかしたら《国益》のために誰かの
命が失われているのかも知れない。
日々耳にする殺人事件のニュースの中にも、闇へと葬られる《国益》の為に失
われた命を伝えているものがあるのかも知れない。
日本人作家の作品とは思えない ★★★★★
書き出しといい、話しの運びといい、日本人作家の作品とは思えませんでした。まるで外国のミステリーを読んでいるよう。物語全体を貫く虚無感も、日本人の感覚とは少し違うような気がします。名前から、てっきり男性作家かと思っていましたが、日本人の女性の作家なのですね。
寒き地で幼い手を握りしめ ★★★★☆
 『李歐』までの高村薫さんの大きな作品には、私にとり不思議なパターンがあります。主要人物のうち男たちは、愛情の対象となる男の手を握っている間は死なず、その手を離した途端に懐かしさの海に自ら突っ伏し溺れるように死んでいきます。一方で女たちは愛する男の手が握れると彼を助けるために死なねばならず、彼に愛を拒絶された女だけが生き残れます。愛情に包まれて生きのびられた女はただ『レディ・ジョーカー』の障害児・レディだけ、というのは大変象徴的です。
 この背景にあるのは、高村さんが幼い弟を病気で失った哀しみの大きさかと憶測されます。その哀惜は家族全体にとっても余りに深く、なぜこの小さい弟(=男)が死なねばならず、この私(=女)が生きのびるのか、という思いに固まっていったのではとも。
 『リヴィエラを撃て』は、謎解きとしてのロジックが終わり近くで破綻しているように私には思えますが、多くの死を超えた主人公の一人が最後に、理不尽な社会を拒絶した寒い地で幼い男の子の手を握って生きていこうとする姿は、作者の何よりもの願いのようで、読み返すたび心を強く揺さぶられます。
恋人たちの物語 ★★★★★
高村作品を読むときは時間のかかる私ですが、本書は一気に読みました。
テンポ良くストーリーが進みます。
場面がコロコロと変わり多くの登場人物が入れ替わり立ち代り登場
するので読んでいて、しんどくなることがありません。
緊迫したエスピオナージとしてハラハラします。
同時に恋人たちの物語でもあります。
愛する人への深い思いにちょっと涙ぐんでしまいました。
読み終わって、ものすごい無気力に襲われた後、この小説がとても
愛しく感じられました。
さすが女王高村薫です!