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神の火〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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「黄金を抱いて翔べ」から「レディ・ジョーカー」へ ★★★★☆
「黄金を抱いて翔べ」から「レディ・ジョーカー」に至る道筋が見える濃厚な作品です。高村作品の特徴と方向性がこの作品で大きく打ち出され、1つは「マークス」のほうへ、もう1つがこの「神の火」を経て「レディ・ジョーカー」に流れていくのだと僕は読みました。ポイントを箇条書きします。

1)ミステリーやトリックを期待して読むと期待外れに終わる。
2)マテリアルに対するこだわり、質感がそこかしこで立ちのぼってくる。
3)風景のひとつひとつが登場人物の内面を投影している。
4)高村さんの表現を借りれば、過去を背負った人間同士が「隠微な」もつれあいを見せる。
5)叙述が3)の通り登場人物の内面ときれいにわかれていないので、科学小説としてはすうっと入ってためになるかといわれると微妙です。

おもしろいというより濃厚さを味わう作品だと思います。お勧めかといわれるとお勧めですが読む人を選ぶと思うので1点引きました。高村作品を論じるなら通っておかなければならない作品であるのは確かです。

とはいいながら、これだけ書ける人は他にはなかなかいないという1点に賭けて、やはりお勧めです。また、節々に高村さんならではのずっしりこたえるウィットやフレーズが出てきます。
上・下巻総合評価です ★★★★★
スパイものとは縁遠い(かな?)、淡々と、ダラダラと、した日常の描写に引き込まれた作品。
その割に、所々でキーパーソンの急死、など、急展開があったり、なかなか気が抜けない。
中〜後編の情報戦は、かの映画「スパイ・ゲーム」を彷彿とさせて、大変読み応えがある。
アクションシーンもあり、見どころ満載の小説。
分量が多くて、自分は少々中弛みしてしまったが、
クライマックスは多分読者の期待を裏切らないだろう。
美しく、切ない。コレは読破してからのお楽しみ。クフフフ・・・

スローモーな展開でダレるかもしれないから、星4つの方がよかったかも。(お買い得度80%)
面白くない ★☆☆☆☆
高村さんの小説はエンターテイメントなストーリーのはずなのに文章、文体、内容は極度に難解。最後まで読んでも全く面白くない。いくら資料を集めても小説として面白くなければどうしようもない。高村さんはテレビ出演していたときも話がかなり抽象的で主張がわかりにくかった。だから元からそういう人なんだと思った。文でも話でも相手に伝わらなければ意味がない。高村さんの本がたくさん出てるのを見ると、需要があるんだろうなと思う。
上巻読了時の感想 ★★★★☆
冷戦時代の終末期、<北>を含む国際的諜報戦が渦巻く中、自ら東のスパイとなった原子力研究者を主人公として、明日をも知れぬ孤独な日々を生きる人間達の運命を綴ったサスペンス小説。

原子力発電所の設備や制御システムに関する精緻な描写には、いつもの事とは言え驚かされる。また、作者の生まれ故郷とは言え、大阪の雑然とした街の描写の臨場感には圧倒される。反面、<北>、ソビエト、アメリカの描き方は類型的か。また、人間ドラマとしては物足りない面があり、主人公に深い影響を及ぼす江口との関係が不鮮明。更に、何故主人公がスパイとなる道を選んだのかが不明な点に不満が残る。こうした漠とした人間関係の中で、"良"の純真さと薄倖が胸を打つ。

それにしても、体制の崩壊の兆し、国家間の政治バランスの変化が個の人間を翻弄する様を重厚な筆致で描く手腕は見事という他はない。それも、"個"を描く事によって、国家の思惑を映し出すのだから、卓越した技量である。

上巻だけでも読み応えがあったが、作者がどんな結末を用意しているか下巻への期待が膨らむ。
一番好きな高村薫作品 ★★★★★
高村薫の最高傑作は「レディ・ジョーカー」だと思っていますが、一番好きなのは、この作品「神の火」です。
サスペンス、科学系犯罪小説のストーリーですが、人間の心のゆれ、不安と希望と絶望と愛とでもいったようなものが漂っている作品です。
偏食文芸 ★★★★★
この本を買ったのは、2月の後半でした。
高村さんの作品にはまっていたので、内容をよく知らないまま購入しました。
読みはじめたのは、震災後、福島の原発問題がクローズアップされてからでした。

あまりにも、原発に詳しくて驚きました。マスメディアて取りざたされていたので、内容の緻密さに感服しました。

一人の男のカタルシス、それが「神の火」を解き放つことに・・・。

原子力という「神の火」をめぐる男の友情と、歪んだ愛情がいりみだれた傑作だと思います。

ちなみに浜田省吾は「僕と彼女と週末に」という曲の中にこんなフレーズがあります。
♪恐れを知らぬ 自惚れた人は 宇宙の力を 悪魔に変えた♪

原子力の脆弱性を訴え、考えされられる作品です。
love book ★★★★☆
今(上)読み終わりました。楽しい!!
高村さんの本は読んでると、読み終わった後、他の本が読めなくなるんじゃないかと不安になります。
違う世界をのぞく面白さと、島田への変な部分の共感、良の魅力。
良は反則です。
そりゃあみんなメロメロです。
高村さんは魅力ある人物を創るのが本当にうまい。
もし私が最後の旅行の友に選ぶなら一冊は高村さんの小説を入れるのは間違いないです。
まだ(上)だから星4つ
(有)タケフジ ★★★★★
正直に言って、この作家はとても好きです。なぜなら、読者にじっくり読ませる時間と知識と苦痛を課してくれるからです。そして、その対価は前者の付加以上のモノを素晴らしいラストでもたらしてくれるでしょう。大丈夫。期待してください。勉強になることが多いので、心折れずゆっくり咀嚼し、頑張って下巻にたどり着いてください。折り返せばすぐですから。そう、本文の中に「プラハの春を読め」って出てくるのですが、そのおかげで共産主義や東欧の歴史に物凄くハマッてしまいました。
ジン書店mark16 ★★★★☆
読了。『マークスの山』、『黄金を抱いて翔べ』に続いて読みました。まずタイトルが好きですね。“神の火”は作中に何度も出てきますが、その文章が美しくて何だか厳粛な気持ちにさせられました。スパイとして生きてきた主人公がその世界を捨て、けれどももう一度その世界に半ば無理やり半ば自分の意志で還ってきた時、その目で見るのはいかなる世界なのか?主人公が生きてきた環境や父・昔の親友などとの触れ合い方が高村さんの筆力で自然に感じられます。この作品はけっこう前のものですが、原発問題とかって未だに大きな問題です。神から盗んだ火をいかに使いこなすか、また本当に必要なのか、考えないといけませんね。
まつた ★★★★☆
私の地元(だった)阿倍野が舞台。大阪は彼岸を過ぎてもまだ耐えがたい暑さだった・・阿倍野筋に面した窓の外には阪堺電車の軌道が走り・・。皮膚に刺さる熱波がよみがえり、チンチン電車の音が聞こえてきそう。あべの近鉄も陸橋も、あべ地下も登場する。阿倍野を歩いているような気にさせてくれる作品。
御館 ★★★★★
社会派といえばこの人、高村さん。沢山本を書いておられます。現在はリア王という新刊が出てます。「李歐」を書いているのもこの方。近年では「レディジョーカー」が映画化されました。この「神の火」は説明するとネタバレしそうなので沈黙します。不覚にも涙してしまった一品。高村氏の作品を読むにはある程度の時事に通じていないと理解が難しいので、読む時はいつも大変です。
文芸専門書店 ★★★★★
原発技術者だったかつて、極秘情報をソヴィエトに流していた島田。謀略の日々に訣別し、全てを捨て平穏な日々を選んだ彼は、己れをスパイに仕立てた男と再会した時から、幼馴染みの日野と共に、謎に包まれた原発襲撃プラン〈トロイ計画〉を巡る、苛烈な諜報戦に巻き込まれることになった…。国際政治の激流に翻弄される男達の熱いドラマ。全面改稿、加筆400枚による文庫化。

マンショの本屋 ★★★★★
迫力のある大作。リアルに描写された原子炉は文章でしか表現できない迫力があります。読破後の達成感といったら…!「目玉ふたぁつ!!」
朝井隆の店 ★★★★☆
国内八位。「リヴィエラを撃て」でも思ったことなんですが、やはり高村氏のバランス感覚はすばらしいですね。原発や共産主義、スパイなどの社会派ガジェットを使いながらも某本格推理小説家のように過度に押しつけがましい社会派なメッセージ性は何もない。政治的な動きを巻き込んだ話ながらも純粋に冒険小説を楽しむことができるというのはいいですね。さて、本作ですが、上巻はスパイ小説、下巻は冒険小説を楽しむことができる贅沢な作りです。CIA、KGB、北朝鮮情報部、公安と冷戦後期の誰がどう味方なのか全然解らない情報戦を楽しめる前半もいいですが、やはり本領は後半でしょう。文庫版後半二百ページに詰まったエネルギーとスピード感は並でなく、エピローグのカタルシスも並でない。精緻ですが情感も詰まっていておすすめです。
ミステリよろずや ★★★★★
ロシア人とのハーフである島田は、かつて原発時技術者として働きながら、スパイとして情報を流していました。
現在は小さな出版社でその青い目を隠すようにして暮らしているのですが、原発を巡る陰謀に巻き込まれたことから、幼馴染である日野とともに原発の「神の火」を目指すことにまります。
やり場のない怒りと空虚を抱えてある終焉へと突き進む、他の作品にも見られる著者の情念のようなものを感じます。
オチラボ堂 ★★★★☆
原発技術者だったかつて、極秘情報をソヴィエトに流していた島田。謀略の日々に訣別し、全てを捨て平穏な日々を選んだ彼は、己れをスパイに仕立てた男と再会した時から、幼馴染みの日野と共に、謎に包まれた原発襲撃プラン〈トロイ計画〉を巡る、苛烈な諜報戦に巻き込まれることになった…。

島田と良の拙い交流に胸うたれます。
Affinity ★★★★★
【上下巻】長い間ソ連のスパイとして生きてきた男が、ひょんな事から知り合った男をきっかけに、裏の世界へと舞い戻っていく、男の世界を見事に描いた作品。ソ連とアメリカを相手に、目的を果たそうとするその姿は圧巻です。そして、小汚い中華料理屋で凍らせたウオッカを片手にレバニラ炒めをつつきたくなる作品(笑)
tyo本 ★★★★★
原発関連のスパイ小説。でも私の心の殿堂入り。永遠のバイブル。思い込み乙女系島田浩二と意固地なかわいこちゃん高塚良のすれちがいで終わる一生。そんな話。(私が思い込み)
巨石支部 ★★★★★
冷戦時代のスパイのお話し。なんてスケールがでかいのでしょうか!原発の事はさっぱり解らないアホな私ですが、ぐいぐい引き込まれてしまいました。下巻へGO!
クロコダイルのなみだのしずく ★★★★★
実は合田シリーズよりもこれが一番好き。無駄に人が出てこないし、登場人物が魅力的。2回文庫は買いなおしました。消耗しすぎて。
りん’s BOOK HOUSE ★★★★★
最初の頃は男性の作家だと思いこんでいました。こういう話は女性が書かないと思いこんでいたんですね。失礼しました。しかし、その辺の男性よりも男らしい登場人物がでてくるのは間違いありません。
妄迷狂遊雑読店 ★★★★★
ハードカバーと文庫では大幅に違う話。私は文庫版が好きです。これで高村薫にはまりました。
こだわりブックセレクション ★★★★★
上下巻と大長編ですが、一気に読めました。すごいです。