素晴らしい出来映え
★★★★★
文句なしに面白い。
介護に携わるすべての人々を代弁している?と思う。
浮き彫りになる問題
★★★★☆
29才、無職の「俺」。寝たきりの祖母を自宅で介護し、大麻に耽る。第131回芥川賞受賞作。
作者の自伝的小説。介護生活での苦労などを皮肉混じりにひたすら語り続けている。
単純な物語としての面白味は限りなくゼロだが、書かれている事実一つ一つの情報としての価値は十二分にある。
それは日本が現在、超高齢化社会に突入しているからだ。
およそ全ての人に可能性がある、将来の親の介護。
その時の様々な問題点を本作品は浮き彫りにしている。
ただ筆者の考え(思想)は、一般人とかけ離れた部分もあり、その全てが参考になるわけではない。
だがその考えは、筆者の祖母に対する深い愛情を別側面から捉えたそれであることが文章からひしひしと伝わり、
それが同時に、介護の厳しさを読者に伝える。
快感を以て読めよう
★★★★★
やんちゃな若者が介護をする、という程度の話だが、
ディテールが書かれている上、
カタルシスもあり、しっかりした小説である。
テーマにも個人的に興味があり、真摯な気持ちで読んだし、語り手に好感を持った。
また、それだけならどうということはないのだが、ともかく文章が楽しい。
この擬ラップ文調とでもいうべき文体、ダサイという人もかなりいるようだが、
私としては気持ちよかった。やや単調ではあるが、この分量なら許容範囲。
これだけ提示されても、別段新しいという感じは持たないが、
著者がこのレベルの冒険(文体だけでなく)を続けていけるならば、
そして続けていけそうとも思うのだが、
次作以降も楽しみである(何年も本が出ていないのが心配だが……)。
ロックでパンクな介護生活。
★★★☆☆
何者かになることが人生の全てであるかのような思考をオレは
拒絶する、何者でもないオレをそのままほうっておいてはくれぬ言葉は、
誰かが社会から受けた抑圧をそのまままた他の誰かにぶつけ、そうした順送りに俺のところまで
やってきたのかとすら思えるのだ。
俺は社会性を保つために道化になろう。敵は個人じゃない、
その背後に聳えるケチな言葉のピラミッドだ。
己が恵まれすぎていることに気付くものは、恵まれぬわが身を嘆くものより、
感謝の情に恵まれる。
なるほどなあ〜〜と思った作中の文章であります。
恥をしのんで、お願いします。
★★★★★
芥川賞受賞直後に購入して数ページ読み、そのままうっちゃっておいたこの本。
文庫の広告を見て、そういえばと棚から引っ張り出した。
言葉のリズム、段落の少ない文章などに違和感はなかった。楽しんで読めた。
でも、身近にこの主人公がいたら、私はきっと「介護の現場で当事者の本当の
汗を流しはしなかった」叔母のように見え、「まるで己を楽しませるレジャー気分」
で祖母に会いに来る、叔母以外の祖母の子らのように思われちゃうんだろうな。
そう思ったら悲しくなった。私には介護の実体験がない。たまに施設に会いに
行っても、何をどうしてよいかわからない。
ご本人は別のものを書きたいかもしれないが、私は一読者として『続・介護入
門』なり『介護基礎』なりモブ・ノリオにもっと、「介護の実体験」を語ってほしい。
「ベッド全体を上下に移動させる電動モーターが、何よりも介護者の腰を守る
ための安全装置だ」などということは初めて知った。無知ですみません。もっと
教えてください、モブ・ノリオさん。