中でも、この本にある幾つかの失敗談を読んで感じたことは、ユーモア・エッセイを得意とする方の文章に往々にしてある「些細な出来事でも殊更おかしく書こう」とする「力み」のようなものが全くないということ。
角田さんの綴る失敗談はとても淡々としていて、でもそこはかとなくおかしいのです。
エッセイの所々に散りばめられた風景描写などは、やはり小説家の文章だなあ、と思わせるものがあります。
なかでも「記憶の食卓」は納得。
記憶が硬直してきたことに対して、年取ったなぁとか
嘆くのではなく、したたかにその流れと向き合って楽しむ。
そうすると毎日が大切に思えるし、友情も変わらず
大切にしていきたいと思える。