グインが主人公なのに
★★★★☆
主人公のグインが辿っている道筋であるのに、何故外伝なのか? しかも今までの外伝と異なり、一冊一話ではなく、四冊も続く立派な「長篇」であるにもかかわらず。作者はあとがきで、たとえ主人公がグインであろうとも、自分が描きたい中原での国家群の駆け引きや争いから離れていれば外伝となるのだ、と述べている。ならば《グイン・サーガ》というシリーズ・タイトルとは乖離していると言うしかあるまい……。
ともあれ、ようやくグインは恋人でもあり、主君の息女でもある王女を救い出す事ができた。尤も、シルヴィアのていたらくをみれば、いみじくもザザが言った通り、冴えない結末ではある。無論そのかわりに、キタイの少年達との交流があったり、その他のキタイ人とのやりとりへのオチがついていたりするわけであるから、それはそれでいいのだろうが、四冊続いたこの物語のヒロインたるべきシルヴィアは、あまりにも可哀相な扱いではないか、と思える。さて、ようやくグインは中原への帰途についたわけだが、果たして本編への即復帰は可能なのだろうか?