一生訪ねることがないような国の実情を知りたい人におすすめ
★★★★☆
世界中を周っている曾野綾子氏が各国、各地域で感じたことを綴った本である。海外を旅行すると日本との習慣の違いや、日本の便利さ、日本の治安の良さなどを実感するが、曾野綾子氏のこの本では、私たち一般人が普通いけないような、危険な地域や聞いたこともないような国にまで足を延ばしているので、観光でいくような国で感じる以上に、日本との違いを感じていることが伝わってくる。
その中でいくつか印象に残ったものを。
スリランカのイメージと言えば、温和で豊かな自然に恵まれて、紅茶もカレーもおいしい素晴らしい観光地であるが、スリランカのジャフナという場所をご存知でしょうか。私自身はこの本で初めて知ったのであるが。
次の詩は曾野綾子氏がジャフナを思った詩である。
「ジャフナ
お釈迦さまがいつも微笑するスリランカの北の半島。
死んだインコの伸び切った首の形という人もいれば、
それこそ牙を剥いた虎の横顔という人もいる。インド洋に突き出した半島の目玉のような港、ジャフナ。
ジャフナには、もう誰もいけない、とガイドは首を振りながら言う。
陸路を行けば狙撃され、
海路を行けば船ごと捕獲され、
空路を行けば打ち落とされる。
昔ジャフナは静かな田舎、
ジャスミンの花はもれこぼれ、
子供は戸外で月と眠った。
今なお月光の流れる水田の静謐。
泥田の中に立つ白鷺は神秘の純白。
夢見れば豊饒の島。
目覚めれば血まみれの地獄。
ジャフナ?今でもいけるわよ、と美容師は笑った。
危険は知っているけど、
生きてたって死んだって、
貧乏人は、大して変わらないんだから。」
スリランカはすばらしい観光地もあれば、内戦で傷ついている場所もある。
地獄と天国がこの世では併存するのである。
また、日本の平和ボケを象徴する文章で印象に残った文章があった。
「イスラエルでは子供をグループで外に連れ歩くときには、先生は銃を持たねばならないのだという。自衛しなければ生きていけない風土というものが現実にある。彼らは自分以外誰をも信じない。しかも世界的に、そのような姿勢の方が絶対多数だろう。日本の安全は国連軍に守ってもらえばいい、などと子供のようなことを言った学者が日本にはいたが、そういう言葉を聞いたら、アメリカもイギリスも、ドイツもスイスも、中国も韓国も、キューバもイラクも、北朝鮮もカンボジアも、おそらくすべての国が唖然とするだろう。誰も、軍備に金を割きたくは無い。誰も軍事的な戦闘で命を落としたくはない。しかし現実はそうするしかないのである。」
日本は安全で清潔で便利で素晴らしい国とは思うが、日本という国の特異さにも気づかされた一冊であった。
海外旅行時に必携の1冊
★★★★★
もし海外旅行へ出かけることがあれば、行きの機内で本書を読んでおくと、現地で「ヘェー」続出、かつハプニング対応にも慌てることはないと思います。旅先で写真やビデオ撮影の時も、通り一遍の観光者目線でない、かなり面白いショットが撮れるきっかけにもなります。
ちょっと不満でした
★★★☆☆
この本は著者のこれまでの著書からの抜粋集。説明に書いてなかったので、タイトルと著者名だけで知らないで買ってしまいましたが、これじゃ、いくらいいことが書いてあっても、もっと先を読むことはできないし、細切れのものを読んでも読んだ気がしません。著者の著作は大好きなので、星3つにしましたが、はっきり言って不満でした。
外から日本を眺めてみる
★★★★☆
1960年代から最近までに書かれたエッセイをまとめたものです。
海外邦人宣教者活動援助後援会での活動および日本財団理事長としての活動の一部でもあります。
見方によっては批判もあるかもしれませんが、つねに弱者やそれを応援している方に対する暖かい支援をしていることに間違いはありません。世界中の奥地や僻地と言われるところで、恵まれない人のために生きている日本人がいます。もちろん日本人だけでなく多くのシスターやブラザーが献身的な活動をされています。
自分自身もガーナの奥地のミッション系病院で働く外国人の方を多く見ました。人を殺しあうのも宗教、人を救うのも宗教なのかなと考えると複雑な気持ちがします。
しかし一つだけ間違いのない事は曽野さんも指摘してますが、外国に出て日本を見ると、日本ほど平和で安全な国はないということです。格差とか勝ち組、負け組みとか、そんな事を言っていられない国の方が多いのです。アメリカですら。