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貧困の光景 (新潮文庫)

価格: ¥452
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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先進国とは次元の異なるアフリカの貧困 ★★★★★
本書が扱う貧困とはアフリカを主とした途上国のもので、日本を始めとした先進国の貧困とは次元の異なるものである。前者と後者を同じ言葉で括るのは無理があると思うので、それに相応しい新たな言葉が欲しいところである。

アフリカの貧困と言うのは、日本に住んでいる限り想像できない凄まじいもので、その実情を知るだけでも本書を読む価値がある。さらに、先進国的見地から資金や技術、人材などをいくら注ぎ込んだところでアフリカから貧困はなくならないと言うこともわかってくる。私は本書を読み、アフリカの貧困は、そこに住む人たちの思考パターンに起因していると思うようになったので、著者らの行っている人道的援助にも疑問が湧いてきた次第である。彼らの思考パターンを変える権利を先進国側が持っているのか、当事者にその意思があるのかと言ったことについて、本書は触れていない。

自身の作った海外邦人宣教者活動援助後援会が資金援助した世界各地へ、監査と言う任務であるにしても、様々な困難を乗り越えて実際に足を運んだ著者には素直に敬意を表したい。
日本の貧困問題など吹っ飛んでしまう悲惨さ ★★★★☆
著者が見聞したアフリカの国の貧困やその問題点についての鋭い視点が光っている。

日本でも最近派遣切りやリストラなど雇用問題を背景として「貧困」関連の本が多く出版されているが、本書で語られているのは「明日の食べ物すらない状態」の貧困。つまり日本の貧困問題とは全くレベルが異なるのである。

こうした国をみて「日本はまだましだ」というつもりはないが、日本の「贅沢できない状態」と貧しい国の「食べることすらままならない」状態を「貧困」と同一の言葉で語ることには違和感を持った。

世界中には貧困が溢れており個人的にも支援したい(僅か数十円で子供の命が救える)とは思うが、自分のできる範囲のことを無理のない範囲で支援するのが個人的な支援の姿として正しいと思う。
世界の裏側 ★★★★★
海外から日本へ帰ってきて一番最初に感ずることは、
「なんて『普通』なんだ。」
ということ。
で、この普通とは一体どういうものかと、つらつら考えると次のようなことかも知れないと思う。
例えば、
「空港や駅、繁華街で物乞いが寄ってこない。」
「買い物をしても釣り銭をごまかされない。」
「暗がりでも無防備で安心して歩ける。」
「お金を分散して持ち歩く必要がない。」
「食べ物や飲み物がどこでも手軽に入手できる。」
「トイレが無料で綺麗に使える。」
「電車やバスの中で居眠りができる。」
「たとえ公衆便所の水道水を飲んでも腹を壊すことは、まずない。」
など。

本書で取り上げられている貧困の光景は、まさにこれらの安心がまったくない社会なのだ。
本物の貧困とはこのように過酷で公的機関でさえ容易に援助することができないという厳しさを持っているものだということ。
戦前生まれの価値観を持つ筆者を通して見ると、現在の日本で声高に叫ばれている格差社会などという問題は、問題にするのも間違っていると感じさせる迫力がある。
確かに格差社会という言葉には一種の「だらしなさ」が含まれているような気がしないでもない。
自分の子供の万引きを店のせいにしたり、給食費を払わなかったり、所得操作をして不正に生活保護を受け取ったり、仕事を選好みしすぎた結果仕事を得られず無職だと騒いでみたり、公園の一画を占拠して住む権利を主張したり。
そんな人々と格差社会という言葉は、本書で取り上げられている貧困と比較すると同根の問題ではないかとさえ思えてくる。

日本社会は世界の中のほんの特例なのかも分からない、と思った。
恥ずべき視野の狭さ ★☆☆☆☆
筆者はあくまで日本の中〜上流以上とアフリカなどの
極貧の世界を比較し、「日本人なら〜と考えるだろうが…」
というフレーズを繰り返す。

実際に現地に行った者だけが感じた圧倒的な事実、という
ものはたしかにあるだろうが、ここに書かれている貧困は、
少なくとも私にとっては今まで自分がメディアを通じて
知っていたものと情報としてはほぼ同じだった。

貧困や不幸は常に相対的なものであり、人は誰も生まれ落ちた
環境の中で決定されていく。「日本人は一度アフリカで
短期間でも生活してみるといい」などと無神経なことを
書けるこの筆者が、小説家としてさほど評価が高くないのも
納得がいく。

細部にわたって個人の価値が問われ続ける今の日本社会の
生きづらさと、極貧諸国の構造的な問題は比較しても意味がない。
また個人に向けられる暴力というものも、社会のレベルとは
無関係に常に存在するのだ。
絶対的貧困を知る上では良書だが ★★☆☆☆
絶対的貧困の光景を強烈に理解する上では良書。
ただし筆者のメッセージはどうも日本との比較らしい。そして残念ながら日本に対する視点があまりにステレオタイプなものに留まっている。
“日本人は知らない。でも私は見た・知っている”という主張が随所にあり、正直いって鼻につく。
ピークはP175“社民党が小泉首相に格差が助長されていると詰め寄る。凄まじいアフリカの格差社会を知らないからこういう質問をして平気なのだ”
“そういう人は、電気のない干ばつのアフリカ…生きてみたらどうか”
下を見てどうする。アフリカよりマシだから日本人は甘い・恵まれているというロジックはまったく以て意味をなさない。
個人的には「格差格差」と叫ぶ主張には同意できないが、筆者のような反論では一利もない(害もないかもしれないが)。
一般理論を知らず、現場のみを見て一般論化しているルポのレベルを超えられていない。

ただしやはり貧困を考えるうえでは良書。涙した章もたくさんある。