“かつてプリンスと呼ばれたアーティスト”が1999年に発表した、20世紀最後のオリジナル・アルバム。あの“プリンス”によるプロデュース、そしてヒップ・ホップや現代R&Bに色目を使っていた90年代の“あのアーティスト”の作品群とは一線を画す、開き直ったかのような全盛期80年代プリンス的楽曲群にファンは大喜び。すでに腐るほど時代の先端を行く名作を届けてくれた人なのだから、「アーティストとして後ろ向きだ!」とかそういうことを言わずに、ただその良質な音楽を楽しめばいいじゃないの、と思わせる傑作だ。(麻路 稔)
歌う喜び、音楽を作る喜びに帰ってきたプリンスが、いい
★★★★☆
かつて「1999」を世に放った彼として、ポジティブな活動をせず過ごしては勿体なさ過ぎる1999年という年ならではの戦略もあっただろうと思いますが、そんなこと忘れて今聴いてみても、この「RAVE un2 the Joy Fantastic」はプリンス自身が楽しんで作っている様子が思い浮かび、かつ、ポップなサウンドが聴ける、という意味で結構めずらしいアルバムでしょう
(「Chaos and Disorder」は言うに及ばず、1990年代初頭の一連のアルバムや1996年の三枚組「Imancipation」は、音楽の質こそ高いものの、プリンスの怒り・苛立ちが悪い方へ作用していた感じがします。世の中には、怒りがプラスに作用する音楽もあると思いますが、プリンスの場合、サウンドが最も素晴らしい香りを放つのは、やはり、本人がポジティブな気持ちである時、あるいは、苛立ちでなく、哀しみにつつまれ、ポジティブな音楽をクリエイトしないと生きる力を失ってしまう、という状況の時でしょう)
一曲一曲がとても丁寧に仕上げられているためか(録音やミキシングのやり方等もあるのでしょう)、かつての「1999」や「Sigh 'O' the Times」のような、謎に満ちた感じ(何度も何度も聴いて、それでも謎がいっぱいな感じ)ではないですし、「Around the World in a Day」や「Parade」のようにロックやポップスの歴史に残るエポックメイキングなアルバムか?というと、そうではないです(たぶん)
でも、この「RAVE un2 the Joy Fantastic」はとてもまばゆい輝きを放っている気がします
それは、この才能とスター性に恵まれたプリンスという人が、自分自身の怒りをブチまけるのでもなく、才能を見せつけようとするのでもなく、ふたたびポジティブなサウンド、良い曲を作って、リスナーに向かって歌い、ギターを弾き、リスナーを楽しませて自分自身も楽しもうとしているからに思えます
フォーマットが古い、過去のスタイルのリユースじゃん、と思ったとしても、プリンスの歌そのもの、ギタープレイそのものを味わってみると(つまり音楽そのものを味わってみると)、、、
可愛らしく青春チックな8ビートギターポップの「So Far, So Pleased」を聴いた時(相当以前からファンだった自分は)なんだか何年も元気のなかった友達がひょっこり、何事もなかったかのように元気な姿で帰ってきたようで、自分でも笑ってしまうくらいに嬉しかったです
「Man of War」を聴くと、バラードを歌い上げるシンガーとしてのプリンスの、一見掟破り(あるいは器用)に見えて、じつはちゃんと、ギミックなしのソウルフルな曲を演れる頼もしさがわかりますし、切々と歌われる「I Love U, but I Don't Trust U Any More」なんて(良い意味で)プリンスのあのデビューアルバムに入っていてもおかしくないようなウブな失恋の歌で、「ああ、この人の底には、デビューする前からずっと失わずに生き続けてきたものがあるんだ」と嬉しくなります
「Strange but True」も世紀末のP-Funk的というか、
たぶん、ほかの人が演ってしまうとシンプル且つチープなトラックですが、ここはプリンスの気概ひとつで、パワーと気品のあるトラックになっています。やっぱりこの人は音楽の「王子」です。荒れようと、アンダーグラウンドに目配せしようと、どうしても醸し出てしまう気品があります
この人が(怒りやダークサイドの引力に負けず、逆にその心の闇と上手くバランスを保って)ポジティブな弾力を持つ音楽を作り出す時、本当に凄いものが生まれます
ジェイムズ・ボールドウィン(マイルス・デイヴィスとも親交の深かったアメリカの黒人作家)の小説「Sonny's Blues」に、「この世の暗闇のなかで俺達の手にしているたったひとつの光が音楽なんだ」という一節があるのですが、このアルバムのプリンスのボーカルはそんな希望に満ちた輝きと香りとを放ってます
快。
★★★★☆
久しぶりだから(3年ぶり)黒直ってねーかな、と、思って聴いたら、やっぱり黒かったけど凄かった。曲のバランスも良く、黒時代ではいちばんリラックスして聞けるアルバムだと思います。前半4曲の、どブラック(セグエは除く)、6〜8曲目の爽やかなナンバー共に、超ハイクオリティー。そして極めつけが、9曲目のEveryday Is A Winding Road.かっちょよすぎです。こういう曲を簡単に作ってくれるから、殿下のファンはやめられません。あと、Strange But True.のような面白いアレンジの曲、もっとやって欲しいものです。
本格的な80年代リバイバル1
★★★★☆
1999年作。プリンスにしては珍しく、3年のインターバルを置いてリリースされました。ジャケットが"スター"しています(笑)。
本作の特徴は、何といっても豪華なゲスト陣。チャックD、イヴ、シェリル・クロウ等々、多数のゲストがフィーチャーされています。そして「早すぎた80年代リバイバル」。99年時点では、80年代リバイバルはあるにはありましたが、アンダーグラウンド中心(エレクトロクラッシュと呼ばれていたような…)で、ウケ狙い(笑いのネタ)のような雰囲気でした。そんな中で1曲目から「Lovesexy」期の未発表曲、Tr.2は「Sign‘O’The Times」期の曲のリズムを換骨奪胎したようなファンク…。前作「Emancipation」でも少し80年代に戻った感がありましたが、ここまでやるとは!!
前作よりは音もシャープになっております。その原因はおそらく離婚(爆)。何とわかりやすい(笑)。Tr.13で離婚について歌われております。"Forever In My Life"(87年)のリズムパターンを下敷きにしたTr.16、日本盤ボーナスのTr.17は個人的にお気に入りです。
メジャーレーベル復帰で、本作に関するインタビュー(!)やトピックも豊富だったのですが、チャートは不振。orz 大きな原因は、やっぱり、99年では、80年代リバイバルは早すぎたのではないか、と個人的に思いました。
一方、予告されていた"Welcome 2 The Dawn"はどうなったのやら。
再び革新のイコンとなるか
★★★★☆
アリスタとの合意により表街道に戻ってきたPRINCE(以下P)の快作であります。[1]の特徴ある各パートの音色と
ギターソロでブート〇〇聴きまくりの猛者達は昔の音源とわかった事でしょう。PRINCEが戻ってきたのです!
部屋の空気を揺らすシャウトと彼のテイストによりリスナー許容の限界までスリム化されたバックトラックが
イノベイト将軍だった90年前後を彷彿とさせます。なんとチャックDが[2]にお呼ばれです。音楽により様々の
障壁を破壊してきたのがPなら強烈な意思と言葉で同志の地位向上に貢献してきたのがチャックです。
PublicEnemyのアルバムをPが聴いていた事も感慨深いですし、このアプローチは90年代前半のものより意味があります。
でもオケはバンドサウンドというのが何とも・・「強烈なコラージュのループ作れよ」と思いました。
ワーナーが許さないかもしれませんが自分の曲のサンプリング許可を出して外注すれば有名Pがみんな飛びついて
きた筈です。[3]の香るようなメロウネスの極上ポップに彼のセンスの確かさが伺えます。空間を大事にした音配置で繊細
な色添えをしています。[5]にはラフライダーのイブを迎え粘度高めのトラックを提供しています。グエンを迎えた[7]は
見事な仕上がりでスキが見当たりません。ギターの音色・ミキシングまで最高でマーケットに戻ってきた彼を確信する曲です。
後半はシングルカットするのに何も問題ない素晴らしいロック・ポプチューンが並びます。アグレッシブな取り組みはありま
せんが安定のフォーマット上でいまの彼が昔の自分(PRINCE)の味付けをパロディっぽく楽しむ曲もみられるなどリラックスの
中に前向きなエナジーが感じられて以降の展開を期待させる出来です。またラリー・グラハム&メイシオ・パーカーの演奏
も作品の肝です。
買いです。
★★★★☆
90年代の不調(と言ってよいかわかりませんが)プリンスの評価が底を打ち、これからまたかつての快進撃が始まるという印象の作品でした。9曲目なんかは最初聞いた時、70年代末のディスコ末期のイディオム満載で一緒に聞いていた弟(40歳。かつて早熟なディスコ少年だった)と思わず大笑いしてしまいました。もちろん良い意味です。