他人事パワー炸裂
★★★★★
よくいるよね、他人のことは非常によくわかるのに、いざ自分で何かする段になると甘い計画で大惨事を招いたりする人。著者はまさにその典型である。軍人としての能力をここで評価はしないけれども、国民党の実情やその後の情勢に関しては非常に的確に判断している。またつとめ人としてみれば非常に真面目な軍人でもあるし、一人称の文章も面白い。そりゃ中国や東南アジアの情勢などがカオスだった時代に出版されればベストセラーにもなるだろうよ。
今読む意味がどこまであるのかは分からないが、一人称ラノベ的なおもしろさはあると思うし、また中国という国に対する達観にも似た理解もまた参考になるのではないだろうか。
さらにいうと、教科書では一瞬で飛ばされる終戦から植民地崩壊・冷戦までの権力の空白地帯の記録として読むこともできるのではないだろうか。
帰国して国会議員として活躍するが、基本的には国会議員の仕事は実務を指揮するわけではなく、政策・構想は究極には他人事なわけで、そりゃ他人事パワー炸裂で高い評価も得られたのだろうな。