メンツは弟のアルバート(ドラム)と25歳の新鋭ピアニスト、ジェブ・パットン(孫みたいなものだ)。曲によってはサブベーシストが加わる。
タイトル曲の美しいバラードから始まり、ビバップ、ブルースやスイングなど黒っぽいフィーリングが印象的だ。枯淡の味わいといいたいところだが、演奏はどうしてどうして、まだまだ瑞々しい。父親に捧げた組曲などはしみじみと聴かせてくれる。
超ロングラン花形グループのベーシストであったことが、かえって音楽的な可能性を制限したのかもしれない。ポール・チェンバースやリチャード・デイビスなどと比べると、ヒースは地味な印象を拭えない。しかし、MJQのリズムを支え続けた実力は高い音楽性とともにもっと評価されてもいい。
79歳の初リーダー作。これもなめし革のような地味な作品である。しかし、ヒースの全身の皺のひとつひとつからジャズの匂いが立ち昇ってくるかのようだ。幽明界(さかい)を異にするミルト・ジャクソンやジョン・ルイスは、両手を叩いて快哉を叫んでいるだろう。