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あにいもうと・詩人の別れ (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,050
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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犀星再発見のために ★★★★★
 望郷詩人として知られる室生犀星の多彩な才能がそれぞれの収録作品に現れている作品集だ。それぞれの作品が別々の表情を持ち、別々の犀星発見を読者に迫ってくる。
 それは逆に、室生犀星という小説家がいかなる小説家なのか、とらえどころのない印象を与える結果ともなっている。
 「多様な犀星」をどうとらえていくか?

 例えば「職業作家」として、メディアによって多彩な作品を書き分けていく犀星を作家論として取りあげていく方向。これは戦争詩を依頼されるがままに書いた犀星と通底しているだろう。

 あるいは、「あにいもうと」を一つの中心として、そこで語られる父親のイメージに「日本的封建性」を見、それを中野重治の「村の家」の父親と比較対照することによって同時代の文学全体を視野に入れた論へ広げていく方向。

 いずれにしろ戦時下の文学者のあり方を再検討する必要があるのはまちがいないところである。これは現在の状況が強いる問題なのである。
 望郷詩人といったイメージとはまた違った「犀星再発見」のきっかけとなる作品集である。