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或る少女の死まで―他二篇 (岩波文庫)

価格: ¥693
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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壮絶な少年時代である。元武士と女中との間に生まれた「私」は生後間もなく近所の家に養子として預けられる。実の両親への思い断ちがたく、日に何度も実家を訪れては養家の親に叱られる毎日。やがて実父が死ぬと、女中であった母は追放されて消息不明になる。「何処かで生きていて欲しい」母への強い愛慕から「私」は河原で拾った地蔵を庭に飾り、それが縁で寺に養子として迎えられる…。
本書に収められた「幼年時代」は、詩人としてはすでに名を馳せていた室生犀星の処女小説である。作者自身が「他愛のない自叙伝」と評する物語には、とてつもなく孤独な少年の姿が、詩人の稀有な言語感覚で描かれている。例えば作者が「父」と書くとき、それは血を受けた実父のことであったり、もらわれていった寺の老和尚であったりする。それを犀星は等しく「父」と呼ぶのである。唐突で時には無邪気とさえ感じられる言葉遣い。だが読み進めるうちにその言葉の一つ一つが、宝石のように幾層もの輝きを放って迫ってくる。この独特の言語感覚が、新鮮な涼風として当時の文壇に迎えられたに違いない。
他に、やはり自伝的な「性に眼覚める頃」「或る少女の死まで」を収録。若く貧しい詩人の孤独な青春時代を題材に、人がどれほど純粋な存在であるか、そしてどのように汚れていくのかをつづった、犀星文学のテーマの原点を成す作品集である。(三木秀則)