福永武彦編の抜粋版詩集。
★★★☆☆
私は本書で初めて犀星詩集を通読したのだが、
なんというか、文語作品にも口語作品にもボソボソした短めの詩が多い印象を覚えた。
私のように、詩に対して流麗なレトリックや殺し文句を求める人は馴染みにくいのかもしれない。
白秋の滑らかさも、拓次の湿潤さも、立原の爽やかさも、藤村の古風な調子もないし、草野のようなエネルギーもない。
結局、犀星を味わうということはそういうボソボソを噛み締めることに他ならないのかもしれない。
『小景異情 その二』や『昨日いらしつて下さい』のような有名作を除くと、
韻文として読者の頭に残りにくい作品が多いように感じられた。
『老いたるえびのうた』『切なき思ひぞ知る』などは良かったが、一方で『救へない人人』は散文的過ぎるように感じた。
ちなみに有名な『犀川』は本書には入っていない。
巻末の編者による解説は読み応えがあった。
詩と小説で二足のワラジを履いた犀星の足取りと作品の変遷が、簡潔に説明されている。
犀星の膨大な数の作品を薄っぺらい文庫本にまとめることの困難さは分かるが、
せめて処女詩集くらいは全て読めるようにして頂きたかった……。