本書"A Short History of the World"は、"Outline of History"への大反響に「大衆は知識を欲している」との確信を得たウェルズが、より読み易い様にこれを簡略化して1922年に世に問うたもので、当時全世界で三百万部と云う異様な売れ行きを示した。日本でも戦前から何度も邦訳が為されており、この岩波新書版の改訂前(『世界文化史概観』)の初版は1939(昭和14)年まで遡るが、当時のウェルズは既に世界国家の構想を唱えたり、「日本の天皇制はここ数年の裡に崩壊する」等を含む数々の「予言」を行って危険視されていたこともあり、彼の思想的な側面についての全容は殊に昭和時代に入ってからは我が国には余り知られて来なかった。
阿部知二によるこの1966年の改訳版は1946年の死の直前のウェルズ自身による第2版を基本に、彼の息子のG.P.ウェルズと歴史家のR.ポストゲートが手を加えた1965年の第3版を補遺の形で収録したものである。