20世紀を代表する英米児童文学
★★★★☆
本作品は1912年にアメリカで発表された。また色々な訳が出版社から出版されているが、本書は教科書にも使用された『スイミー』を訳した谷川氏によるものである。
きっと本書を手に取る人は、「あしながおじさん」の正体を知りたいと思いつつ、またそれが結末で明かされることを期待しながら読むことであろう。かく言う私もそうであった。構成の殆どが孤児院出身のジュディの手紙であるが、その描写は素晴らしい。あしながおじさんの正体につながる結末への伏線も見事なものである。
ジュディの成長、恋愛、学問への探究心、子どもっぽさなど、幾つかのテーマがあるとは思うが、一番大きな作者の子どもへのメッセージは本書P182の「ささやかな喜びからうんとたくさん喜びをつくってしまうことこそ大切」というメッセージに表現されているのではないかと、私は感じた。
同じ、女の子を主人公にした『長靴下のピッピ』と比較して彼女の破天荒さはジュディにはなく、やや教育的であることがうかがえた。難しい単語が随所で出てくるものの、ジュディのやわらかさ、口語体のやわらかい文章が調和を保っていると感じたものである。
結末にやや物足りなさを感じたが、それも本書の魅力の一つではあるのかもしれない。ぜひ、結末にむかってジュディと同じ心を抱きながら、読み進めてもらいたいものである。