ブランドアイデンティティだけで、果たしてブランドの本質を説明できるのだろうか・・・
★★★★☆
ブランドの特徴として、内部統一性・一体感の保持、外部世界との連帯性・共有制の獲得という二律背反した性格があり、ストーリー=神話によってこれらを結びつけることで、ブランドコンセプトを壊さずに、顧客基盤を拡大することが可能となる、という。しかし、この神話=ストーリーを中心としたブランド理論は、"通常ブランド"に適応できない、ブランド構築・ポジショニングにかかわる戦略に触れない、流通ブランドとの対抗についての示唆がない、などの問題を抱えている、という。
こうした問題意識に基づいて、パワーブランドの形成の背後にあるメカニズムに着目し、"普通ブランド"への応用可能性を探るのが本書である。その中心的な内容として、ブランドパワーの源泉として「ブランドアイデンティティ」の重要性を強調。かつ、この構造を明らかにし、その要素である、製品としてのブランド、組織としてのブランド、人材としてのブランド、シンボルとしてのブランドという4つの側面においてブランド構築することの重要性が主張される。各章ごとにこれらが議論され、最後に、流通ブランドとのかかわりを議論する内容となっている。詳細は、本書を参照されたい。
若干のコメント
それにしても、本書は、ホントウに、ブランドにかかわる謎を解明できているだろうか、果たして疑問である。たとえば、ブランドには上述したように、内的統一性と外的連帯性を同時に達成しなければならない、という命題があるが、これが、神話=ストーリーによって何故、可能となるのか、こうした問題をまずは解明すべきではないだろうか。そして、この解明こそが、普通ブランドへの応用可能性を開くのではないか、と考える。少なくとも、ブランドパワーの源泉として「ブランドアイデンティティ」に注目し、その構造を明らかにして、それぞれを向上させよ、といわれても、それが何故、ブランドの本質にかかわるのか分からない、と思うからである。
ブランドは、何故だかわからないのだが、みんなが意味がある、と思っている、そうした状況が勝手に形成されていく、そうした不思議さを持っている。
恐らく、ブランドの解明は、こうした点にアプローチできるものである必要があり、本書やこれまでのブランド論とは全く異なる視点が必要だ、と考えられる。