「心理実験」「人間椅子」「陰獣」「パノラマ島奇譚」の名作四つが全部収録されたこの短編集で、乱歩の短編は読めばいいと思う。
乱歩は、「怪人二十面相」から入り、この短編集を読み、「孤島の鬼」「蜘蛛男」と四冊読めばいいと思う。

収録作品は長編中編短編によらず、著者の名作とされる作品ばかりだ。
それらが、著作年代順に配列され、初出時の挿絵の一部も掲載され、お値打ちものだ。

「二銭銅貨」といった、海外の作品の影響を受けている？と思われる初期作品から、
絢爛華美で夢の様な作品である「パノラマ島奇談」、陰湿なストーカーが登場する「陰獣」、
そして、晩年の名作「化人幻戯」などなどという風に、著者の功績を年代順に辿る事が出来る。

ここに収録されている作品に、著者の様々な顔を見る事が出来る。
おどろおどろしい作品、少々奇妙な作品、夢の様な華美な作品など、色々だ。
ただ、犯人を推理する作品では、巧みに読者の思惑が裏切られ、あっと驚く様な結末が待っている。

本書は分厚い文庫本であり、文字がやや小さめで、作品を出来るだけ多く収録しようとしている。
創元推理文庫刊「日本探偵小説全集」は、内容の割には価格がリーゾナブルで、手軽である事が嬉しい。

「人間椅子」や「陰獣」など、代表的な作品が収められているので、最初に読む本として、オススメです。タイトルから受ける印象ほど、乱歩は、おどろおどろしくなく、割と気楽に読める作品も多いので、未読の方は、この辺から、チャレンジしてみてくださいね。あと、このシリーズの、夢野久作のも、なかなか、オススメです。

江戸川乱歩は、長篇は、破綻していて読むのに辛いモノが多いけど、短篇に関してはハズレがほとんどない。そして本書は、そのハズレのほとんどない乱歩短篇の中でも、代表作と言われている作品を揃えている。