「どっちみち、どの人間も、他人には決してわからない、いや、自分自身でさえ不可解なものをもて余してたたずんでいるにすぎないと思うのであった。」と、あるとおり、「南極の氷山の割れ目を覗き込んでいるような寂寥感」を抱えながら、人間同士の営みを続けることは果たしてどこまで虚しいことであろうか、かたちもないところにこそ真実があるともいえる奥深い小説でありました。