論争史別の哲学史
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ヴィンデルバンドの『哲学史』をもとにしているというだけあって、通常の哲学者ごとの哲学史の記述ではなく、時代ごとの論争テーマごとの哲学史となっている。そこで取り扱われるテーマもヴィンデルバンドのものと似ていて、「個体化」があるなど、なかなかに専門的な内容になっている。
類書には『西洋思想大辞典』やラブジョイの『観念の歴史』などがあるが、前者は事典で、後者は哲学史をすべてカバーしてはいない。哲学史全体を概観できる思想史の著作として貴重であるばかりか、日本人によって書かれた哲学史の最良の一冊でもある。