WW1時代の日本を描いた作品は珍しい。
★★★★☆
WW1における史実を元にした物語。日露戦争〜WW1で我が国は、俘虜の取り扱いについて国際的にも高い評価を受けていた(日露戦争は「ハーグ陸戦条約」が適用された最初の大戦争)。事に板東収容所は、松江所長の人道的な指揮の下、世界でも有数の人道的収容所となっていた。
恐らく、光人NF文庫の『板東俘虜収容所物語』がベースとなっていると思うので、興味がある諸兄は是非一読して欲しい。
様々な登場人物の「ごった煮的」な物語構成なので、2回ほどみてやっとつかみ所が見えてくる。しかし、飽くまで事実に準じた作りになっており、久留米収容所に於ける俘虜に対する粗雑な扱いや、当時の日本人のドイツに対する感情(敵国としての敵愾心と、先進国として憧れる心)や、国破れた軍人らの心情を分かり易く伝えていると思う(ドイツ俘虜がヤケ酒してるシーンなど)。日本軍の旧型の軍刀や、45式軍衣が見られるのも面白い。
ただ、マニアな目線で見てしまうと、少々物足りないかも知れない。
青島での戦闘シーンが余りにもお粗末であること。同盟側の俘虜が実は一枚岩ではなく、ポーランド系、ハンガリー系、エルザス・ロートリンゲン系、イタリア系俘虜との間で対立や暴力事件が起き、その扱いが問題となっていたこと(これはパリ講和会議後深刻になる)、スペイン風邪が猖獗を極め、俘虜、衛兵、板東住民にも多くの犠牲が出たこと(司令官が墓参りしているシーンがあるが、彼らはスペイン風邪の犠牲になった俘虜達である)、また、あまりにも明治政府を悪いイメージに描いていること等・・・。
音楽的には、男声合唱による第九は貴重であるし、興味深い。しかし、あの小編成オケに重ねる音声がダイナミックすぎるのと、トランペットが独逸式ではなく、フランス式であったことが気になった(板東ではフランス式しか入手できなかったものと脳内補完)。
とはいえ、日本に於けるドイツ俘虜の扱いについてよく分かる映画であり、高い資料価値が有ると思う。
これを原点として今の日本国を見直そう。
★★★★★
無条件に 「希望」が手に入る。涙があふれ出る。
日本国においてこのような「事実」があったのか。
驚き。
嘘八百でも良い。
会津藩士の死に損ないを父としてもち、育った男が大日本帝国の陸軍にて生き残った。
使命は青島(チンタオ)のドイツ軍捕虜収容所の所長。
陸軍内部での会津出身者の位置づけがわかる。
会津出身者の希望の星、松江豊寿 を演じるは松平健、あの時期に かような 状況があったとしたら。日本国住民とドイツの捕虜との不思議なる交流をつくっていたとは。
不思議な収容所は 四国は 徳島県の板東で誕生した。
奇跡の話が 山盛り。
涙流しながらこの作品を観た。
ここが『原点』であらねばならない。
今の日本国の状況を この作品を視て とらえ直す、すごい世界が浮かんでくる。
最後はベートベンの『第九』を演奏するドイツ人たち。
すごい。
必見。
まさしく夢物語。
しかし、今 私たちが必要なのは『理想の社会』である。
最近の東映大作は大味。
★★★☆☆
本作を観終わった後の感想は、まず「北の零年」を彷彿させたことだった。あまり良い印象ではなくて、何か大味だなあ、という感じ。両方ともに大後寿々花が出ている、からではなくて、「北の零年」は行定監督入魂の大作なのに、一緒に組むはずだった戦友・篠田昇を失いあたまから失速気味だった雰囲気と似ているからだ。本作の監督は70歳を超えても意気軒昂な名匠・出目昌伸。でも、黒澤組や三船と組んでいた迫力はなく、総花的でとっ散らかってるイメージしかなかった。主役の松平健は途中からフラリと現われ、最後は第九演奏を最後まで聞かずに去っていく。共演のブルーノ・ガンツも存在感が薄く、出目監督はこの俳優の凄味を把握していなかったのではないか。他にも青いコンタクトをしてがんばった大後寿々花や國村隼、阿部寛などの豪華共演陣の扱いも乱雑気味で、もったいなかった。阿部寛なんて中盤までは何をやらかすか!といういい雰囲気だったのに、後半はほとんど登場さえしない。あと、何千人収容という板東収容所のオープンセットがショボすぎる。見た限りせいぜい数百人しかいなかったが、気のせいか。第九を聞いていたのも200人くらいかな。確かに東横映画の時代からこの会社の大作は大味ではある。でも最近の観客は色々なメディアで観ることができるので、後々の保存を考えたらもう少し堅く作ったほうがよいのでは(笑)。星3つ。
たたかいのない 戦争えいが
★★☆☆☆
第一次大戦中の捕虜収容所のドイツ軍捕虜。それも日本にある収容所の話。戦時下、人々のこころがすさんでいる中こんな収容所があったことがすばらしい。
なぜ人は戦争をおこすのだろう。
一対一で会えば言葉が話せなくとも伝わるものがあるのに〜と思う。
見ていて「戦場にかける橋」という映画を思い出した。
第2次世界大戦下のビルマ戦線における日本軍による連合軍捕虜収容所。こちらは、イギリス軍捕虜と日本の収容所の話だが、国内ということで町の人たちとの交流なども描かれており、これはこれで良かった。
が・・・テーマはすばらしいのに映画としては、全体にちょっと物足りなさを感じた。
もっとうまく掘り下げられれば良かったように思う。手作りの見るからに稚拙なヴァイオリンがあんな音を出すはずないし、収容所内の物資が不足している中での楽団が、あんなすばらしい演奏と合唱ができるのはむしろおかしい。
もっと手作り感のある演奏のほうがリアリティーがある。
それに最後のカラヤンの演奏。
むりくり日本人の”第9”好きにつなぐ必要性が全くないし、テーマとしてすばらしいだけにちょっとがっかり〜かなっ
すっとんきょうなナレーターとカラヤン第九は要らなかった。
★★★☆☆
期待して見たのに・・・」「はぁ〜」とため息をついた映画でした。
ノベライズの小説で涙したので、物凄く期待しました。ブルーノ・ガンツに松平健という素晴らしい役者さんを持って来ているんですもの。ただ映画が始まって、すっとんきょうな男性ナレーターの声で感動がお笑いに変わってしまった気がします。(T。T)
後は最後のカラヤン第九。あれは不要だったと思います。上手な第九は聴きたくない。映画が描くところの「ドイツさん」の魂の叫びの第九で充分だったのです。最後でまた「あーあ」とため息をついてしまいました。
けれども脇役が良かった。特に、志を役の大後寿々花ちゃん、高木繁役の国村隼、カルル役のオリバーブーツ、「うまさん」役の平田満、そして松江の妻歌子役の高島礼子・・・と、結構脇役が良い味を出してます。個人的にはカルルと志をちゃんのシーン、うまさんのドイツ兵に対する消化しきれない感情を描いたシーン、カルルが脱走して、民家で手当てを受けるシーンが好きです。素朴な場面は本当に美しい感動的な物語なのに、なんでカラヤンとすっとんきょうなナレーターを入れたかなあ?そう言う点で辛いけど☆3つ!