名古屋大学入学祝いに購入
★★★★★
私曳地康の考えではプラトン(あるいはソクラテス)のイデア論は一読して
貫性のなさを指摘できるほど,脆弱なものではないと思います.
特に洞窟の比喩は強烈です.
残念ながら「パルメニデス」は一読もしていないので,
その辺りのことはわかりません.
ぜひ,この本はその辺りの論拠をもってお示しいただければとおもいます.
著者の哲学に興味のある方に
★★☆☆☆
著者個人が主張する独自の哲学観として興味深い書物ですが、宗教についての説明にはずいぶんな誤解や偏見が含まれています。哲学と宗教の違いについて述べている部分がありますが、この説明も本質を外していると言わざるを得ず、著者が宗教の知識を最低限でも持っているとは言い難いです。
なので関連知識のない方がこの本を読まれる場合には、これら宗教に関する著者の説明は間違いが多いということを、予め承知のうえで読まれることをお勧めします。
現代の哲学をいくらか勉強している方には、少なからず料簡を広げる機会を与えてくれると思います。
これから勉強したいと思っている方は、あえて主流ではない本書から入ってみると良いかもしれません。
プラトンの哲学やその著作について知りたい方には、別の本をお勧めします。
本質主義的
★★★☆☆
従来のプラトン像を一転させる手さばきは(その解釈が妥当かどうか自分には判断できないが)鮮やかだ。ただひとつ気になるのは「物事には必ずその本質があるはずだ」という本質主義的な考え方が疑いもなく前提とされている点で、家族的類似の概念などに見られるように現在この考え方は強い疑念に晒されている。現代思想におけるプラトン批判の文脈にはこの本質主義批判も含まれているはずだが、その点について本書では触れられていない。
立憲民主主義
★★★★★
1 あらゆる時代と国において、
立憲民主主義の精神が問われ
続けていくと思います。
原点に戻って−
★★★★★
私は哲学科出身でもなんでもないので、プラトンとへーゲルが現代思想界で最大の悪玉とされていることを本書で知って驚きました。 曰く、彼らこそがヨーロッパ、ひいては理知主義絶対思想の親玉で世界に混乱をもたらしたから−。
素人だからこその意見を言わせてもらえば、この二人が元凶なのかどうかの議論自体は複雑なものでも、基本的にこれは常識に沿った考え方をすればいいのではないでしょうか。 例えば、イスラム原理主義者が自爆テロを繰り返すのはコーランに、アッラーのために殉教した者は永遠の緑園に入れることが約束されているからですが、だからといってイスラム教自体が元凶といえるのでしょうか。 イスラム教が人々を救い、日々の糧となってきたかそうでないかは、全イスラム教徒に聞いてみないと分からないことではないでしょうか。 思想や宗教が人間に災禍をもたらす時、私はどちらかといえば人間の側に何か余分な思惑や欲が絡んでいるからそうなるのではないかと思うのです。 例えば歴代の指導者が全てクリスチャンであるアメリカが、“右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ”どころか、“やられる前にやっちまえ”と、世界中に爆弾の雨をふらせるのは、イエスやゴッドの責任なのでしょうか。 教えを捻じ曲げてしまうのは人間の方ではないでしょうか。
竹田氏はこの本の中で、その様な絶対主義者としてのプラトンではなく、むしろ価値観の多様さや処世の技術が人間の尊厳自体を萎えさせる混迷の時代にあってこそ、プラトンの“真に善きもの”を求める精神、本来の知の姿を見据える哲学が必要だ−ということを言いたいようで、私もそれには納得できます。 どんな哲学が正しいとか間違っているとか言う議論よりも、生きていく上で本当に大事なものは何かを考えさせてくれる契機になるだけでも、普通人にとっては哲学の存在意義は立派に果たされるのですから。