ミステリーという枠を外し、現代小説としても最高峰。
★★★★★
日本ミステリーの傑作中の傑作。ミステリーという枠を外し、現代小説としても最高峰なんじゃないでしょうか?トリック自体はどんな人でも半分以上過ぎたら分かってしまいますが、だからつまらないわけではなく、後半からが面白くなってきます。作者の井上夢人氏がトリックで「アッ」と驚かせようと意図しているとは思えず、54のファイルや複数主人公による進行もストーリー上の必然で、圧倒的な文章力も有ってか、主人公の不幸な過去や哀しみが上手に表現され、一言の台詞すら無い本当の主人公が浮き彫りになってくる構成は圧巻というしかありません。ラストの1ページは賛否両論が色々と有るだろうけれど、私はクールなラストに大感動しました。映像化は不可能に近く(よほど上手くやらないと、視聴に耐えられない代物になってしまう筈)、読み進めていくうちに小説ではないと表現出来ないと理解出来るでしょう。ストーリーは似ていないけれど、何処となく我孫子武丸の『殺戮にいたる病』を彷彿とさせます。解説も秀逸。
読みやすいということは素晴らしいこと
★★★★☆
ある意味井上夢人という作家の特質が如実に出ている作品。
それは、読者にとても「優しい」ということだ。
文章は平明で読みやすく、メインとなるトリックも最後まで引っ張ることのできた読者は驚きを十分に堪能できるであろうし、早い段階で気付いた読者に対しても、自分の考えを確認あるいは敷衍しやすいよう解りやすく伏線を張り巡らせラストまで澱みなく導いてくれる。
この作家は作品のトリックや構成のもたらす効果・驚きを無意味に隠そうとしない。
不要な目くらましやペダントリックな言い回しで読者を幻惑しようともしない。
逆にいえばそれは ぶれのない自信の表れでもあるし、確固たる実力の証ともいえる。
この作品のラストも、トリックの向こう側にあるものを感じて下さい、という作者のメッセージがいやみなく私たちの胸にひびく仕上がりになっている。
可塑的な存在の私たち。その恐ろしさ。
★★★★★
出張中の夫の帰りをひとり待ちつつ、ワープロの練習を兼ねて日記をつけている主婦・向井洵子。彼女の周辺で奇妙な出来事が起こり始める。誰かが彼女を狙っている?それともおかしいのは洵子のほう?次々にあらわれる矛盾。混乱。殺されたのは誰?一体なにが起こっているの!?
最高におもしろいです。読み出したら途中やめるなんで絶対にできない。就寝前の読書用には決してしてはいけません。
この手の話は結構多いし、中盤から結末の予想はなんとなくつくけど、高幡英世まで・・・だったとは思わなかった!
そしてファイル54のページ、すごく効いてて深い余韻へとつながっている。ここを埋めるべきなのは、読んでいるあなたかもしれない・・・。いいね!うまいね!作者の手腕に感動してにんまりしてしまう。
文章のテンポがよく、読んでいて気持ちがいいので、結末を知っていても何度も読み返してしまう本です。
いざ混乱の中へ
★★★☆☆
序盤から、読めば読むほど混乱してくる厭らしい展開で、何が真実なのか、誰が
何をしているのか、自分が馬鹿になってしまったような錯覚に陥ってしまいます。
中盤過ぎに明らかになるひとつの事実によって、謎が氷解していきますが、最後
までテンションは下がることなく続きます。
お約束といえばお約束のメイントリックですが、最初から最後まで良く考えら
れた作品です。
衝撃の結末!
★★★★☆
1枚のフロッピイディスクの中に様々な人間のファイルが収められていて、読者がそれを読んでいくという形で物語が進行していく。はたしてだれがどんな目的で事件を起こしたのか?しだいに真実が明らかになるとき、意外な展開に読者はきっと、あっというに違いない。結末は・・・どうか自分の目で確かめてください。