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クラインの壷 (新潮文庫)

価格: ¥662
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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夢オチに近いのはいただけない ★★★☆☆
「これが通れば何でもあり」というものが幾つかある。薬品による記憶の改変、後催眠による遠隔操作、そしてバーチャルリアリティもこの範疇だろう。これだとどんな状況でも作り出せる。この作品はそういう意味でミステリーではなくSFである。
一度は触れて欲しい名作 ★★★★★
普段小説は読まない者の感想ですが、
今時仮想現実を題材にしたと聞けば、誰でも
オチはアレを想像すると思います。自分もそうでした。そして予想どおりアレでした。
しかし読む手が止まりません…
徐々に真実に迫っているはずが手の平で踊らされていた感覚、
そしてラストでの必然とも言える主人公のあの行動、
それを仮想現実という設定を生かして巧みに演出しています。
あれが全て現実ならイプシロンという企業は所属している人間含め、どこぞの生物兵器だの人体実験やらで
悪巧みしてる架空団体よりよっぽど怖いです。無機質という形容詞が非常に似合います。
他のレビューでもありますが、SFなのにガッチガチのプロットで
固められており、単純に仮想現実を楽しむだけ、という話に終止していません。

個人的なマイナス点は、仮想現実の話だと思ってたら半分ミステリーだった事、
ミステリーの宿命ですが、タネがわかっていればもう一回読む気にはなれない事です。
マイナスではないですが、舞台が狭く、箱庭を観察してるようで壮大な話を
期待してると肩透かしするかもしれません。
本を読まない人でも読みやすく、堂に入った文章も魅力の一つです。
最上の娯楽小説の内の一つとして、胸を張ってオススメします。
MS-DOSの時代に書かれたバーチャル・リアリティ ★★★★★
久しぶりに読んだけど、やっぱり怖い話でしたわ。

書いたゲームのシナリオが、200万でゲーム会社に売れることになった大学生が主人公。
買い取ったゲーム会社が、シナリオを元に作り上げたゲームは、なんと触覚から味覚まで五感全てをシミュレートする完全なバーチャル・リアリティのゲーム。主人公は、ゲームのモニターとしてこの驚くべきゲームを体験することになる。もうひとりのモニターとなった美少女、梨沙とゲームを進めていくうちに、彼はこのプロジェクトに大きな陰謀の存在を疑い始める。

というようなストーリーで、これ以上書くと何書いてもネタバレになりそうなのでアレなんですが、とりあえず、『クラインの壷』というタイトルが何よりも雄弁に本作のテーマを語っているとは言えるかな。ラストまで一気に読ませるサスペンスがたまりません。

それにしても、本作は1989年の作品で、巻末の解説によれば、PCはコマンドベースのMS-DOSで、当時最新のゲームはドラクエ3という時代にこんな小説を書いた岡嶋二人(と言うか、井上夢人)の想像力はやっぱりすごいですね。
ミステリーとしても、ちょっとしたSFとしても楽しめる ★★★★☆
設定から想像できるように、テーマは仮想と現実の融合。
主人公はイプシロンに騙され、仮想と現実をごっちゃにされる。
どっちが仮想で、どっちが現実なのか。
主人公と一緒にだまされるもよし。
途中からたくらみに気付いて、その境界を探るもよし。
ミステリーとしても、ちょっとしたSFとしても楽しめる。

東野圭吾の「パラレルワールド・ラブストーリー」に近いか。
ラストはややSFよりのパラドックス的な終わり方。
私はこういうの結構好きでした。
スリル満点、読後の恐怖も一級品 ★★★★★
岡嶋二人の最高傑作と言われている作品。
SFは苦手なので読まずにいたが、全くの杞憂だった。
これは文句なしで面白い。

ゲーム開発のモニターとして仮想現実の世界を体験する青年の話だが、
やがて二つの"世界"が交錯し、本物と偽物の狭間で我を失ってゆく。
そのスリル満点な展開にどんどん引き込まれていき、
読みながら冷や汗をかいた。

迫り来る恐怖と興奮、崩壊してゆく自我。
一体この世界の何が真実で、何が真実ではないのか。
友情も愛情も何もかもが全て薄っぺらいものに感じられた。

自分はここに生き、ここに存在しているのだろうか?
読後一気にそんな感覚が襲ってきてゾっとし、
思わず周りとキョロキョロと見回して声を発してみたり、
ドアを開けて外を眺めてみたりと挙動不審に陥ってしまった。
完全にやられたという感じ。
手に汗握る展開も久しぶりに味わえたし、大満足の一冊だ。