1997年の出版ゆえ致し方ないのだろうが、CSのためのITないしはネット活用といった視点は完全に脱落している。本文中に、「ベンチマーカーは、メモ魔でなけれなならない」(p96)というくだりがあるが、著者もそうしたメモ魔のお一人なのだろう。各種のセミナーや研修旅行で耳にした言葉を絶えずメモをし、膨大なメモ帳が出来上がった。そのメモ帳を眺めていたら、本が書けそうな気分になって、一気呵成に書いた、そういう印象である。分析も体系立てもない。総じて、「実践的」とあるのは「非体系的」であることの言い訳に過ぎないことが多いのだが、本書もそのご多分に洩れない。

佐藤知恭氏が監修した本で「ＣＳ実践研究会編」とあります。突然ＣＳ推進室勤務という業務を命じられた田村均氏が、「顧客満足ってなあに？ＣＳ推進室勤務を命ず」を読み、その著者にコンタクトをとり、その後、ＭＢ賞の研究をはじめ手探りで自社にＣＳを定着させるために取り組んできた記録を描いています。これから顧客主導経営に取り組もうとしている企業には必ず役に立つはずです。この本は「顧客満足ってなあに？」の実践マニュアルなのではないでしょうか。