6世紀から19世紀までの日本史を、短編小説を連ねて一気に描き上げるという離れ業を成し遂げた一冊。
時代と場所は変わっても、あるいは己の権力を拡大・固守しようとしながら、あるいは世を変える理想を胸に燃やしながら、あるいはささやかな幸せを願いながら、欲望と謀略の炎に巻かれて消えて行く人々の姿は変わることなく、壮絶の一言に尽きる。
これだけの長い時代範囲で様々な事件を題材にしながらも、作者の歴史と人間を見る視点が全く揺らいでいないことは瞠目に値する。
この本を読み終わったとき、古代や中世に生きた人々が、近・現代の人間と同様に人間臭く思えてきたことに私は驚きを感じた。