私は中国文学の翻訳なら真っ先にこの村上訳をおすすめしたい。有名なのは小川訳や立間訳だが、情景がすぐに思い浮かぶような言葉のリズム感、高揚感は村上訳が一番だと思う。関羽の顔は原文では「棗のような顔色」としてあるが、日本人にわかりやすいよう「干し柿のような真っ赤な顔」とするなど、思い切った訳語もあるが、こうした個々の工夫の是非は措いても、非常に引き込まれる文章だ。私はこの人の文章で中国文学に目覚めた。同訳者の『ザ・水滸伝』『ザ・西遊記』もおすすめ。