ふわっと掬いあげられる
★★★★☆
6作の連作短編集。
途中からガラリと雰囲気が変わります。
前半、ダーク。重い。
後半、やさしい。ほんのり甘い。
後半3編はなんだかメレンゲを連想します。
深い深い穴の底に落とされてから、ふわっと掬いあげられる気分。
それでも私は前半3編の方が道尾氏らしさが出ている気がして好き。
まぁ、たまには後味のよい本もいいかも。
群像劇かな?
★★☆☆☆
全く関係性の持たなかった人生が、偶然にも繋がっていく群像劇。
テレビではそう紹介していたので興味を持ったのですが、正直、群像劇としては読めませんでした。
6つのストーリーは完全に独立しているわけでもないのですが、ただ共通の時間を共通の土地で過ごしているだけで、
ストーリー同士のリンクが密接ということではありませんでした。おまけに回想シーンに大半を費やす物語もあり、
全体的な繋がりは薄いです。
中には一つの短編では主人公だった人物が、他の章でチラリと姿を見せるといった細かな演出もありますが、
あってもなくても変わらないような繋がりが多かったので、物足りなさが勝っていました。
それから、絶望や切なさがどの作品にも滲み出ていて、連作としてのテーマ性はあるのですが、
何分どれもただ暗いだけで、飽きてしまいました。
これぞ連作短編集。
★★★★★
道尾氏の作品はすべて読破しているが、連作短編集の中では、「鬼の跫音」「花と流れ星」
よりお気に入りだ。
全6編のうち、前半3編と後半3編の対比が秀逸。
どこまでも救いようのない前半と、わずかながらの光明を垣間見せる後半。
なぜこの作品で直木賞を取れなかったのか疑問に思い、本命「月と蟹」を
読んでから、このレビューを書いているが、やはり完成度で言うと、今作の
方が優れている。
優れているというか、今作の方が、最近の道尾氏の作品の風潮からいうと、
バランスがとてもいい。
「カラス」「ラット」「ソロモン」のようなミステリー&どんでん返し系から、
ノワールを残しつつ、登場人物の心情を深く掘り下げた作風、とでも言えば
いいのか。
いずれにしても、筆者は明らかに作風を変えてきているが、いわゆる「道尾流」
を極める過程での試行錯誤がうまくいった結果、出来上がった作品ではないかと思う。
大御所たちの直木賞の書評は、理解できない点が多かったが、いいも悪いも、
この作品が多くの読者に読まれ、何とも言えない読後感を味わってほしいことを
願ってやまない。
う〜ん
★★★☆☆
うまいとは思うけど、どうしてこんなに題材が暗いんだろう。どうして、子供への性的虐待が何度も出てこないといけないんだろう・・・それだけで、女の私は読んでいてとても不愉快になる。もう少し、明るい話だったら良いのに・・・暗すぎる・・・人にも勧めにくい
切ない連作短編集。ミステリーも良いがこういうのも上手い。
★★★☆☆
鬼才、道尾秀介氏の連作短編です。
ホラー、サスペンス、ミステリー、文芸など多彩なジャンルを描きわける著者ですが、本作もミステリー的なものから純文学系なものまでバラエティに富んだ内容となっています。
それぞれの物語が部分的に繋がることで、一つ一つの話に奥行きが出ています。
2007年から2009年までと約2年にわたって「小説すばる」に初出された各話ですが、2年間という長い期間を経ても、それぞれが同時点に存在するかのごとく緻密にプロットされているのに驚きます。
どの作品もテーマは人間の哀しさ。それを虫や花に例えて切なく表現しています。とはいえ、希望を織り込んであるので読後感は悪くありません。
個人的には、トリックスター道尾秀介が好きなので、やはりもっと長編の本格ミステリーを書いてもらいたいと思いますが、こうした作品も悪くないとは思います。