生々流転
★★★★★
エンタテインメントとしての小説という形態、芥川はその極致なのかなと思っております。特に初期。面白くて、そしてある程度納得する処に落ちる。たとえば魔女は退治される。善きことは知られる。安心してその世界に身を浸せる感覚があります。こんなこと言ったら怒られるかもしれませんが、それは時代劇やディズニー映画に浸る感覚に似ていなくもないと考えます。
但、晩期に至り作風は大きく変わります。たとえば晩年、小説『歯車』を書いた芥川は「遂に芥川が小説を書き始めた」と好意的に評されます。最初にも書いたように、わたしは小説をエンターテインメントだと思っているので、初期芥川をより評価したいと思っていますが、当時はそうでなかったようだし、現代でももちろん、そうでない人は一杯居るでしょう。
とまれ、大作家は常に生々流転、ある評価・ある立場のもとに留まることなどないのかもしれません。その流れを知る為にも全集をお薦めします。