惨劇の後に
★★★☆☆
 1994年に出た単行本の文庫化。『鬼女の鱗』につづく、「宝引の辰捕者帳」シリーズの第2弾。
 7篇が収められている。
 各話ごとに語り手が変わるという趣向が面白い。語り手を取り巻く人間関係が中心となり、主人公たる「宝引の辰」は脇役の扱いとなることも。こういうのも面白い。
 捕物帳としては、バランスの良い作品だと思う。人情、トリック、江戸の風物、奇想がそろっており、しかもどれかに偏ることがない。安心して読めるシリーズだ。
 ミステリとして光るのは「夜光亭の一夜」。単純だが、効果的だ。また、別の作品の主人公の先祖らしき登場人物も。
 物語としての巧みさでは、「忍び半弓」が良かった。思わずニヤニヤしてしまう。