タイトルほどには怖くない
★★★☆☆
タイトルだけ見れば、何か推理小説かホラー映画のようなタイトルだ。おそらく、公明党と創価学会の日本支配の陰謀の真相を、党の最高幹部を永年勤めた当事者が衝撃の告発。みたいなイメージを狙ったのだろうが、内容はさほどではない。きわめてまともな本だ。
著者自身も、今日のように創価学会と決定的な対立関係に陥って、袂を分かち合う以前に書いた本であり、最近の本のような創価学会に対する恨み節は書かれていない。
中曽根改造内閣が成立する前に、田中曽根内閣と言われた中曽根内閣を倒し、自民党支配を終わらせようとした、社公民路線の戦いの記録である。それがのちの細川内閣の誕生、自民党支配の終焉につながった。
二階堂を担いでやがては失敗に終わった、佐々木良作と、竹入義勝と、矢野絢也の奮闘を公表した政治裏面史、男達のドラマと言って良い。
歴史の現場の当事者だけが書ける貴重な記録
★★★★★
初出は1994年9月だが文庫化に合わせて大幅な加筆・修正が為されていることから2008年10月20日の文庫版リリースを初出とすべきと思える。筆者は公明党の第4代委員長であり、22年余の月日を野党として政治の現場に身を置いた人物でもあることから、ここに書かれた事実の価値は歴史的に見ても非常に高いものだとぼくは思う。
場面は田中角栄がロッキード事件を起こした時期に始まる。自民党の田中派が揺るぎ始め、ニュースで『結果』だけ知らされてきた政治が裏舞台ではこれほどの複雑なストーリーで動いていたのか、と感心した。『矢野メモ』は適切にその時の状況を再現してくれる。一番驚くのは、与党と野党がかくも有機的に結びついていたという点だった。時に野党の主張すら利用する金丸信の動きには驚いた。また、リクルート事件の名簿を開示した小沢一郎の度量にも驚いた。まさに今話題の小沢氏だが、ここまでの修羅場をくぐってきた人物に総理をやらせてみたい気がぼくはした。
そして最後は2008年5月12日におこされた訴状によって終わっている。この訴状に真摯に政治の世界を命がけで生きてきた筆者の無念を感じずにはいられない。