イソップ物語にもう一度出会える
★★★★★
「この絵本が好き!2010年版」で国内絵本ベスト1の栄誉に輝いた作品。
もう何人かのレビューがあるかと思いきや、ボクが初めてとなるのは意外・・・
2009年の「くまとやまねこ」をはじめ、代々1位となった絵本とは対象的ですね。
もとがイソップですから、ドラマチックな感動はなく、慣れ親しんだ物語を
いかに再構成したかという点が評価されたのでしょう。
その意味でいうと、冒頭の「きつねとつる」で作り手の姿勢を充分に
感じ取る事ができます。見開き左右に登場するのは、ツルとキツネ。
キツネがツルを見つめる視線の冷ややかさにはゾクッとなりました。
スクラッチによるモノクロのツルと絵筆によるカラーのキツネ。
イソップ物語の特徴ともいえる対照性、逆転性、表裏の世界をさりげなく
暗示させる効果が出ています。
全9話を通してみると、登場する動物たちにけっこう感情移入している
ことに気づく。古典の世界を現代へとつなげた文と絵の巧みさは、
通ならではの見所と言えましょう。
個人的には心地よく眠るウサギの絵が印象に残りました。
カメに負けても別にいいじゃん。なんて思う方も少なくないのでは。