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有限と微小のパン (講談社文庫)

価格: ¥1,200
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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無という本質 ★★★★★
日本最大のソフトメーカーが経営するテーマパークを訪れた理系三人組。パークでは過去に事件が生じており、新たな謎と共に事件は起きる。
本質へと近づいているのは錯覚であり、実際は本質から遠のいているのかもしれません。


「通常、不可解な行為にも、必ず何らかの意味がある、という前提で推理が行われる。君の仮説にしても、ガラスが割られた理由、腕が残されていた理由に、意味を見つけようとしている。それが間違いかもしれない。そもそも、意味はない。意味がないことを目的に、行われた行為なんだ、と考える。そうしてみれば、不思議なことは何一つない」
バーチャルリアリティ ★★★☆☆
今では専門家以外の人には、ほとんど死語になってしまったバーチャルリアリティーがテーマみたいです。


本作の刊行が1998年で、テレビゲームで有名になったのが94年ですから、森先生はこの概念に執着があるようです。


そのためか、ミステリーとうのは体裁でバーチャルリアリティーという概念を語るために本が厚くなっています。もちろんトリックにも関係します。


印象に残ったのは、SF小説のサイバースペースなど夢のまた夢の、VR装置の物理的・技術的制約と、その解決策としての、どっきりカメラみたいな拍子抜けする施設。


機械を便利にするより、生身の人間をこきつかった方が安上がりということで、今日日の不景気では恐ろしい思想です。
小説の中での天才の難しさ ★★☆☆☆
まず感じることは架空の天才を造型することは難しいのだということ.

「すべてがFになる」で表現しきれていなかった間賀田四季の人物像が
シリーズ最後となる本作でどのように描かれるのかに興味があったが,
結論としては尻切れトンボな印象だ.
天才とは単に計算が速いとか,一切の無駄を受け入れない合理的な考え方をする人間ではあるまい.
凡人には思いもよらないような発想とか着眼点で表現されていなければ説得力がない.

間賀田四季と犀川も,会話の中にはそれなりに卓越した思考を表現しようという意図は感じられるのだが,
天才であることが物語の必要な要素になっていないのが致命的だ.
たとえば,東野圭吾氏の「虹を操る少年」では天才の天才らしい部分が
事件やストーリーの重要な要素になっている.
言ってみればストーリー上の必然から天才を造形しているわけだが,
S&Mシリーズでは四季も犀川も萌絵も天才(または天才近似値者)という設定は
キャラクターの肉付けの1つに過ぎない.
本作品でも四季が天才でなくてもストーリー上はなんら問題ない.
会話の中でしか天才性が表現できていないために,
なんだか知性をひけらかしているだけのように見えてしまう.

肝心のストーリーと事件については・・・それなりに面白い真相ではあるが,
別段オリジナリティがあるわけでもないし,
犀川が真相を語りだす流れがあまりにも唐突で説得力がない.
個人的には最初の70ページと最後の30ページ以外はあまり読む価値がないと思った.
舞台に幕を引く ★★★★★
 萌絵の幼なじみ塙理生哉が社長を務めるナノクラフトの招待で、テーマパークを訪れた三人。空港で偶然再会した島田文子から、目的地で死体が消失するという不可思議な事件が起きていたことを聞かされる。そして実際に萌絵たちは死体が腕だけを残して消えてしまう現場を目撃する。犀川や萌絵を観客と見立てたように次々と起きる事件。その背後に見えるあの天才の影。いったい誰が何のために事件を引き起こしているのか?
 シリーズを通して1話完結の形式を取りながら、作品構成としても、作中人物達にしても、それぞれに関連性を持ちながら全体として1つの作品群を作り上げたと言える。これをなしえた理由の一つとして、シリーズを一貫する思想の存在が挙げられるだろう。
 すなわち、謎の全てに常に解答が用意されているわけではない、と言うこと。そして、読者は事件の直接的な観測者にはなりえないと言うこと。だからこそ、どこまでが事実でどこからが作中人物の意見なのかを見極め、解くべき課題設定を行い、事実に基づく仮定を組み立て、事実との突合せをする必要が出てくるのだ。
鮮やか。 ★★★★★
少々、長すぎたのでは、とも思うが、
シリーズの完結編と考えるなら、この長さもやむを得ない。
推理小説としては、はっきり言って破綻しているし、
犯人の動機の弱さも相変わらずで、残念な面は多々ある。
しかし、天才・真賀田四季をはじめ、主人公である犀川や萌絵の成長、
そして森博嗣の価値観が如実に表現されており、
感銘を受ける言葉がいくつもあったのは事実。
『すべてがFになる』と対になる作品であり、
ラストの鮮やかな幕引きは、著者の作品の中では秀逸。
個人的には星5つでは足りない、著者の代表作であると思われる。

タイトルもいいしね。