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野川

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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長野まゆみの今 ★★★★★
いいお話でした。

昔から作者のファンで、すべての作品を読んでいますが、
こちらの作品はそのどれとも違います。ですがたしかに長野さんの作品です。
昔の作品が好きな方には好みが分かれるかと思います。

最近の作品では、現代設定のような作品が多いのですが、その中でも
異世界異空間につうじる非日常がかいまみえ、俯瞰的な表現というのが
私の長野さんのイメージでした。
ですが「野川」はまず現実的ありき、地に足をつけた目線で物語が語られます。
そんななかで、登場する教師があざやかな長野さんの世界の存在を見せつけて
くれるのは陳腐な表現ですが、まるで魔法のようです。
現実的なぶん、また今回は男性同士の云々といった要素がないので、
今まで見えにくかった心のかよう様子がストレートに伝わってくるのが印象的でした。
「白いひつじ」とならんですばらしい作品だと思います。
あらためてファンになる、そんな一冊でした。
教師が本当に良いことを言う ★★★★☆
マユミさんの作品の中では、もっとも現実味を帯びた内容だと思う。
もともと、『不思議の国のアリス』みたいに動物がしゃべったりはしなかったけど、
語彙もファンタジー的要素を削って、フィクションに努めている。
不思議を語る人がいるだけ。
もちろん、それだけで十分イメージを呼び起こせることを証明している。

本の見返しと扉の波打つ模様が「野川」だ。
でも、帯の紹介文は、そんな話だったっけ? という気持ちになる。
そんな夢見がちな話だとは思えなかった……

見たいものがある。でも、見えない。
それは、すでに失われていたり、はじめから無いものだったりするからだ。
想像によるヴィジョンを作り上げることで、不可能なものをも見る。
だからピジョン(鳩)が登場する?

音羽君は後継者として、
「意識を変えろ。」をはじめに、いくつもの助言に耳を傾けて、
地に足をつけて暮らす、生き方を得ていく。
人間は、地上に重力で縛られているのを感じた。
みんな名前が地理的だし。

帯には「最高傑作」とも銘打ってある。
『野川』は緑陰を感じさせるし、話の上手い教師が登場するいい作品だけど、
以前、同じ言葉を書いた『白いひつじ』のレヴューを書き直そうとは思わない。