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グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)

価格: ¥720
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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風変わりな訳文 ★★★★★
わたしは今年の六月に村上訳『グレート・ギャツビー』を読んで以来、すべての訳を読だのだが、はっきりいって村上訳ほど全体的な美しさはない。さいごの名文は村上春樹の方が数段上である(村上春樹のクセがいちばん現れている部分でもあるわけだが)。けれども、古典新訳文庫だけあって新たな訳文に挑んでいるのではないだろうか。最初のワン・センテンスからそれを感じる。村上春樹の次に翻訳することは大きなプレッシャーになったはずだ。
訳文が軽快になりM読みやすさに関しては圧倒的にこちらが上回っている。原文のニュアンスも損なわれていない。古典をはじめて読むとか、古典は苦手だと思っている方は村上訳『グレート・ギャツビー』より、小川訳『グレート・ギャッツビー』を先に読むことを勧める。二回目を読むときに(時間が経てば自ずと再読をしたくなるはずだ)村上訳を読めばいい。
すこし古くさいところがある、村上訳より現代的な訳文だと思っております。まさしく、古典新訳文庫であります!
村上訳が日本語に置き換えただけの『グレート・ギャツビー』だとするなであれば、こちらは現代版に更新された『グレート・ギャッツビー』である、とわたしは強く思うのであります。
わたしは村上訳二回と野崎訳一回と計三回(小川訳一回を足せば計四回)読んてきたわけだが、いままで気付かなかった細部の美しさがこの小川訳『グレート・ギャッツビー』では鮮やかに描き出されていると思う。その部分だけでも、今回古典新訳文庫に訳された意義は大きいでありましょう。
ギャッツビー(ギャツビー)の口癖である“old sport”を野崎孝は「親友」に、村上春樹は「オールド・スポート」と訳しているのに対して今回の小川訳では、はしょられております。
さて、デイジーをめぐり、トムがギャツビーと喧嘩するシーンで、トムはギャツビーに向かって怒鳴ります。「いちいちオールド・スポート、って言うのはやめてくれないか」。
さりとて、今回の訳では“old sport”がはしょられているのでした。どうなっていると思いましょうや? 意識して読んでみて下され。訳者の苦労が垣間見える、興味深いシーンであります。
また、この小説は何度読んでも新たなる発見が多いのでありす。それだけ偉大な小説であるということでありましょう。とりわけ、ギャッツビー(ギャツビー)氏がはじめて登場する映画的なシーン(わたしがいちばん好きなシーンでもある)は、小川訳がもっとも素晴らしい。野崎氏と村上氏と対照的で、小川氏は現代的でクセのない新訳をすることに成功していると考えております。
小川氏の解説はこの小説を紐解くのに大いに役立つでありましょう。