本書は、遺伝学者の著者が、むしろ遺伝子のON、OFFということを通して、人間の本来持っている秘められた能力を発揮できるということを、自身の研究体験談を通して解いている。私たちが何かに夢中になり熱中した時に思いもよらない力を発揮するのは、そのことによって私たちの中の眠っている遺伝子がONになるからだという。
また、科学の発展において重要なのは、学会などの表に表れる「デイサイエンス」ではなく研究者の失敗や、説明のつかない閃きから得られる発想を基にした研究「ナイトサイエンス」という話は、科学の研究のみならずどの分野にも当てはまるおもしろい話だ。
ただ本書は遺伝子のON、OFFによって人間が本来持つポテンシャルを発揮できると解いてはいるが、そのことに対する具体的科学的説明がもう一歩少ないように思う。つまりON、OFFの説明は分かるようだが、具体的にはどういう現象がそうさせているのかは、もう一つ突っ込んだ説明が欲しかった。まあその点はこの著者のほかの本を読むとよいのだろう。