生き続ける意志とは
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カーレースでの事故により、瀕死の重傷を負った著者が、どのように復活をしたかを書きつづったノンフィクションです。
事故で負ったヤケドの状態を赤裸々に淡々と書いていますが、読んでいる方は手が震え、動悸が早くなり、思わず目を背けたくなるほどのリアリティです。でもこの部分は目を背けずにしっかりと読まないと、本書で著者が伝えたい事は理解出来ないと思います。
その上で、このような事故に遭い、厳しいリハビリと辛い治療に打ち克つ心が、どのように形成されていくのかを、物語という他人事ではなく、自分の事として捉える事と本書が大変良質の自己啓発書であることに気づくはずです。
黒マントの男が言う、「生きる事は辛い事だよ」と言う事の意味を理解し、それを乗り越える事が人生の意義であると教えてもらいました。
この先、生きていくのならば
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この先、生きていくのならば必ず読んだ方がいい本です。この本を出版したことだけでも幻冬舎は永劫にきらめく存在価値があります。感謝。
奇跡の生還
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web上に公開されているこの時の事故の様子を見ました。
すごい。。。凄すぎる。。。
本書の中で、著者が自分の事故の時のビデオを見てショックを受けたそうですが
その気持ちが本当によくわかりました。
壮絶すぎる事故。。。まさに「奇跡の生還」という言葉が当てはまる光景です。
それだけに、この事故を他人事ではなく、自分のこととして受け止めた著者の
葛藤、苦悩、生きる意味の探求、そういう様々な感情の起伏が克明に描かれています。
人間の命、生きるとはどういうことなのか、自分も問い直したい、そう強く感じました。
手術などの「肉体的苦痛」とそれ以外の「精神的苦痛」に打ち勝って
再び生き還った(著者はrebirth、新しい誕生と言っている)ことに
深い感動受けます。
死をくぐり抜けた者の言葉
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焼け焦げて包帯で巻かれてミイラのような父親を見てショックを与えないように、と7歳の息子と3歳の娘には事故後顔を合わせていなかった。しかし、これからの生活の事も考え息子にだけは会う事にする。太田は「こんなパパ嫌だ。」と言われないかと、不安な気持になる。
しかし、カーテンを開けて父に対面した息子は走り出して胸に飛びこみ、わんわんと激しく泣き出す。
「佑人、パパは怖いか?」
「怖くないよ。パパはパパのままだから。」
一度死を意識した人の言葉はどうしてこれほど心に沁み渡るのだろう。
読むべき一冊。
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書名からは、クラッシュした瞬間が絶望が希望に変わったような印象を持つが、それは全く逆。
著者が体験した、また体験中の諸々の出来事は殆どの人にとって無縁の世界である。また、著者の心理的な変化も、同様の経験を持つ人の全てに可能な事ではない。殆どの人にとっては実に全く無関係なことばかりである。勿論、自著なので、記憶違いや美化も記述には含まれている可能性もある。しかしそれでも、この本は読むべき本である。一個の人間が、その極限的状況のなかで発する魂の声があるからである。
著者は現在においてもある意味で極限状態に生きているに違いない。その中でこの本を記す事が出来た精神の強靭さに感嘆する。