身近な生き物を見つめる目
★★★★★
カメはとても身近な生き物なのに、意外にその生態や暮らしぶりを観察する機会はありません。自然が減ったとか、触れ合う機会がないとか、感じていた昨今ですが、実は生き物たちはすぐそこで日々を精一杯生きているのだなあということに気づかされます。それに気づかないで、見過ごしているのは、私たちの暮らしが、自然の生き物の生きるスピードとかけ離れうわっつらだけを走っているからでしょう。
カワイイと思ってペットとして生き物を飼うのもひとつですが、その生き物がどこから来たのか、本来はどんなところで暮らしているのかを今一度考えるきっかけにもなった本です。外来種問題も叫ばれる昨今ですが、この一冊から、日本の四季を人間とはまた違った視点で観察し、日本の水辺や里山についても、想いを馳せこれからの生活がどうあるべきかを、様々な人と語り合いたいと思いました。
課題図書としての価値は・・・
★★★★☆
私は読む前は写真家が書いた文章だということで、イシガメの写真には期待していましたが、文章にはそれほど期待はしていませんでした。やはり専門家と、そうでない者との間には語彙力ですとか、子どもに合った表現が随所で子どもを引きつける要素を持っているからです。期待通りというか、その少ない期待を裏切らずに、文章の表現力という点では他の児童向けの書籍に見劣りしてしまいました。断っておきますが私は写真家だからといって、決して下手な文章だとは思いません。落ち着いた口調で語られるイシガメの追跡は、静かな迫力がありますし、興味をひきつけられる面もあります。それでも見劣りしてしまうのは、場面ごとの描写が忠実すぎたからではないかと思います。
しかし、本書の価値は文章にあるのではなく、イシガメの生態や、季節によって変わる人間の生活やイシガメの様子などが、写真家である松久保氏というフィルターが探究心を持ち、どこまでも追跡している点にあると思います。そして写真とイシガメ以外の生き物との出会いも文章による説明は少ないものの掲載する事によって、子どもの探究心をくすぐります。
本書を読んだ子どもが、百貨事典などを手に取り、子ども同士で自分の知識を自慢している姿が目に浮かぶようです。特に男の子は近年の昆虫ブームに乗っかり、生物に興味がある児童が多いと思うので、本書が波紋の中心となり、他の様々なこと―農業や生物など―に探究心を広げてゆく可能性が大いに含まれているのではないでしょうか。
読み物としての価値より、探究心をくすぐるというところに価値を感じる事のできる一冊でした。
知られざるイシガメの行動範囲
★★★★☆
淡路島に住むイシガメ(ペットショップにいるクサガメではなく、ニホンイシガメ)の写真集。
四季折々の写真(日光浴、蛇に食われる、交尾、産卵、冬眠、孵化...)とコメントが載っていて、また、イシガメの行動範囲など観察によってわかった事実なども本書に載っている。
専門家ではなく、写真家が観察してわかったことが書いてあるところが、素人っぽくて良い。
イシガメ好きの方には、お勧めの写真集である。
イシガメ写真集
★★★★★
淡路島の谷川に住む野生のイシガメ観察記(写真集)。
活動範囲が広くて、陸でもえさを食べられること、冬も動くこと、卵のからはやわらかいこと・・・。
イシガメの生態がやさしい口調で語られていきます。
「あぁカメさんやな。」という地元農家の方の言葉の
やわらかさ、カメへの愛しさが、この本全体に表れています。