下巻では主人公は地獄へ突き落とされる「玉城」、さらにおちて行く様がすごい。一方で罠にはまっていき、封印していた過去がばれてしまうこの本全体の悪の主人公「桐生」。壮絶にして小気味いいテンポでどんどん自分も地獄へとひきずりこまれていくのがなんだかわかっていく、しかもそれは快感かも。怒濤のラストに書かれた背負った過去を拒否することへの葛藤は強烈。騙しの手口の導入部はあまりに専門的で少々中だるんでしまうが、地獄への旅へは必要な知識かもしれません。
文章中に書かれる絶叫の言葉(言葉にはなっていないのだが)は呪詛ともいえるおぞましさがある。あとは人の表情の豊かな表現力、それは新堂ワールドには不可欠だ。とにかくはまる、ともかくはめる、それが「無間地獄」の味である。
でも私は桐生の過去の場面は泣きながら読みました。
怖くて切なくて弱くて痛くて恥ずかしくて悪くて言えなくて・・・。
この作品は私にとって忘れられない名作です。