超絶技巧建築術
★★★★★
ウッドハウスの短編は絶妙だけれど、長編の方は技巧派の音楽に似ている。
様々なテーマが入り乱れ、「まさかそんな」というタイミングで絶妙に絡み合う。
単に滑稽小説というだけではなく、その練り込まれた複雑なプロットも
確実に魅力の一つだろう。
その緻密に組み合われたトラブルの中で
針の穴ほどにどうにか開いた解決法を見つけ、提示する執事ジーヴズと、
大英帝国の誇る教育と教養を、残らず馬鹿やる事に傾けている
ウースターの若様に、今回もやられっぱなし。
翻訳の森村たまき氏はガチガチの法律畑のかたらしい。
そんな方が訳されているので、正確だけれどちょっと固めの訳ではある。
賛否両論あるだろうし、私も諸手を上げて歓迎、という訳にはいかないけれど、
慣れれば、それなりに面白くなって来る。
「文庫本はともかくハードカバーは熟慮の上」買いたいという派にも
おすすめの、一読して更に何度も読むほど味のある一冊。