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遺稿集 (講談社文庫)

価格: ¥730
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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カモちゃんの青春記 ★★★★☆
 入院、合コン、焼き鳥屋修業、那覇の夜、サイバラとの出会いの4篇で綴られた小説集。
 読み応えがあったのは、若き日に勤めた新宿の焼き鳥屋編と、バンコクでのサイバラとの出会い編。

 浪人から目標も定まらずに勤めた焼き鳥屋で、店を持つことを目標に少しずつ仕事を覚える姿は、80年代の青春ドラマのようでもあるし、出会い編はセンチメンタルな純情恋愛ドラマのようだ。
 いずれにしてもこれまで「兵隊やくざ」的ハチャメチャな面しか作品にでていなかったカモちゃんの、明るくも哀愁とおバカさが交じり合ったサイドストーリーに触れられる作品となっている。
 
 合コン編以外は、未完の表記のあるなしに関わらず文章としては未完であり、著者が死んでしまった今、続きのストーリーは読者がそれぞれのカモちゃんを思い出して各々の心の中で綴っていくことだろう。
 さよなら、そしてありがとう、カモちゃん。
手をのばせばあったかい ★★★★☆
アル中の治療の最中にガンが見つかり、生涯を終えてしまった鴨志田氏の、文字通り「遺稿集」。
無鉄砲、破天荒な(に見える)行動の裏に隠されていた、幼い頃の父親のトラウマ、それと抱え込んでいた弱さが露呈される。そして、元・妻のサイバラさんの強さが何よりも印象的。最後に掲載されていた、タイでの出会いの文章を読んで、「運命」ってあるんだろうなぁと思いました。
ジャーナリストとして、人として ★★★★★
早いもので、彼が亡くなってもうすぐ1年。
一周忌を前に出版されたこの「遺稿集」は、まさに「遺稿集」にふさわしい内容と構成だ。
死の直前までオズモールで連載されていた闘病記からはじまり、
同じくネット上で連載されていた合コン体験記や、
二十歳すぎに焼き鳥屋で修行した経験を描いた未完の私小説などを間にはさみ、
西原氏との出会いを書いた文章で終わる。

未完のまま終わったオズモールの連載分は、生々しく且つ壮絶な内容でもあるはずなのに、
なぜか淡々と、まるで俯瞰しているかのような印象さえある。
自らの余命を知っておきながら、
彼はどうしてここまで冷静に、淡々と自分と周囲を描写できたのだろう?と、
不思議な気持ちになるのだ。
だが、もしやそれは、
彼が自らをも取材対象にできるジャーナリストの魂を、
失ってはいなかった証だったのかもしれない。
いくつもの戦場で死線をさまよい、命が奪われていく様を目の当たりにしてきた彼である。
自分の死が近いという極限に至り、
事実をありのまま伝える戦場カメラマン、そしてジャーナリストとして、
死を目前にした自分を徹底的に取材し、
フィクションともノンフィクションともつかない形で表現した文章は、
ジャーナリストとしての彼の姿を伝えているように思うのだ。
それと同時に、
どんなふうにも人間は生きることができる、という姿を見せてくれた気がする。

きれいごとでもなく、地を這い、血反吐を吐き、あらゆる恐怖から逃げ続け、
ボロボロになった自分でも生きていけたのは、
やっぱり愛してくれる家族がいて、愛する家族がいたからなのだろうか…。

作者の生き様を痛いほど感じる一冊。
西原氏の「毎日かあさん出戻り編」も併せて読むことをおすすめします。
死に直面した文章の迫力 ★★★★★
亡くなった人間に対して甚だ失礼ではあるが、氏のいままでに書いた文章から考えてあまり内容に期待せずにいた。。しかしそのなかでも特に期待していなかった未発表の書き下ろし小説(氏の青春時代)も含めて、ぐいぐい引き込まれるものがあり一気に読み終えてしまった。
私を作品にひきつけた要素として、「西原の元旦那の今わの際」に対して抱いている関心(それは西原作品を読み解く上でも大きなファクターたりえる)が大きく働いたことも確かだが、やはりそこは「確実な死に直面した者の書く」文章の持つ迫力に敬意を表さなくてはならないであろう。
氏は逝去するまでの半年間、離婚していた元妻と復縁して同居していたため、その最期期の姿は「毎日かあさん」にも描かれている。そこに描かれた明るい姿は宿阿のアル中にようやく打ち勝ちながらもたちまち末期癌に見舞われるという氏の人生にとって、最期の心の安らぎであったか。
奇しくも氏の命日にHP上に掲載された「邂逅」にはその事実も含めて背筋をゾクッとさせられる力がある。


わかるよ、カモちゃん ★★★★★
 著者が撮った風景写真のカバーに、「遺稿集」のタイトル。中身は――当然ながら――活字だけで、手に取ったときはいささか「ぶっきらぼうな本」という印象だった。命日を奥付の刊行日とした本書、もしカモちゃんが生きていたら「法事の引き出物みてえだな」と言ったかもしれない。

 だが、読み始めると止まらなくなり、けっこうなページ数にもかかわらず一気に読まされた。面白い。そして、感動した。なんというか、彼が求めたもの、書きたかったことが、やっと分かった。

「うーん、わからないんです」
「何がさあ」
「家族のつながりが」
(「焼き鳥屋修行」より)

 絆か。その心が俺には欠けている。
(「旅のつづき」より)

 絶筆となった最後の「邂逅」を読み終え、むしょうに酒が飲みたくなった。天国のカモちゃんと一杯やりたくなる。本当に君と友達になった気がするよ。