タイトルからしてとってもイカしている、『鬼平犯科帳』に登場する料理を春・夏・秋・冬に分けて集めた本。池波作品に欠かせないのは、季節の料理。豪華なものでなくてもいい、さりげない日常の食卓が、物語をより面白いものにしている。季節の描写のためとしても勿論、人物紹介、あるいはそのときどきの心理描写に、料理は大きな役割を果たしている。その料理を実際に食べてみたい、作って見たい、というファンは非常に多いはずだ。私もその一人で、見かけて即購入した。
その料理が登場するシーンの抜書きと、著者佐藤隆介氏のエッセイ。巻頭には池波正太郎氏のエッセイ。
簡単に作れて鬼平気分が味わえるものもたくさんあるので、江戸を味わうレシピとして使っているが、深川飯、柱飯(貝柱ごはんなど、素材そのものが勝負、昔は素材が良かったのでバカウマだった、という料理には、つくづく現代の環境が哀しくなる。それは巻頭エッセイで池波先生が嘆いておられる通りだ。
夏には瓜もみ、冬には小鍋だて・・・目と舌で鬼平と江戸を味わい尽くす一冊。読んでも楽しいが、いくつか実際に作ってみればなお楽しい。