ゴサキを筆頭とするイジメの張本人、見て見ぬフリをする同級生と教師、そしてイジメられているみさと。第5巻で主人公キーチが抑えていた苛立ちを爆発させクラス全員を殴り倒した決着は?そして5巻末の予告にあった「みさとへの性的虐待」とは?イジメ事件の一応の収束と、性的虐待の真相が遂に暴かれる。
人物描写も見逃せない。キーチの魅力がより一層深まるだけではない。甲斐の嫉妬とキーチとの交流の深まり。断ち切れない親への愛情を抱えるみさと。その姿に哀しい記憶を持つキーチは世間知らずで怒るしか能のない自分を実感し、極限まで怒りを抑える…。
その他の人物達も溜息が出るほどリアルに描かれる。孫のキーチが理解できない祖父の悩み。キーチの侠気に良心を苛まれて内部告発する刑事。逃げ腰の婚約者。甲斐が唾棄する変わらないクラスメート達の脳天気ぶり。変わらないみさとの父のビョーキぶり。
第6巻で話が一段落したわけじゃない。次巻が発売されるのはまだまだ先。続きが知りたくて仕方ない私は遂に連載誌を買おうと決意した。それほどの吸引力がある傑作なのだ。
新井英樹作品とキーチの魅力がこの第6巻で満を持して炸裂したといっても過言ではない。1、2巻あたりで挫折した人も、まだ全然読んでいない人も、是非この6巻まで読んでいただきたい。きっと、キーチの魅力に取り憑かれ、シビれてしまうことだろう。