本作は犬がくわえてきた人骨から事件が展開される。その成り行きはリンカーン・ライムものを髣髴とさせる正統派の犯罪捜査小説を思わせるが、どっこいコナリーは全く別の方向へと物語をはこんでいく。最近の作品では、ボッシュが警察組織への適応ができなくなっているような印象を受けてきたが、本作では「うそ~!」と叫んでしまうような、それを裏付けるラストが待っている。
幸い「夜より深き闇」というオールスター・ゲームのような作品をはさみ、次回作はちゃんと用意されているのでひと安心。本書の最後にある「人生とはあるひとつのものを追い続けることだと。それは償いです」というボッシュの言葉を信じるとすれば、ボッシュはいつまでもそれを追い続けてくれるのだろう。毎回、次回作が待ち遠しいのが「ボッシュ・サーガ」の魅力なのだ。