ページターナーの面目躍如
★★★★★
TWA800便の墜落事故を扱った「ナイトフォール」の続編ときいていたので、前作ではっきりと描かれなかった事故発生の理由が明らかにされるかと思っていたが、それについて直接的に触れた部分は一切なかった(何か暗にほのめかしている部分があったのかも知れないが、少なくとも私は読み取ることができなかった)。だから、前作の真相究明だけを期待する向きには本書は薦められないのかも知れないが、それでこの「ワイルドファイア」を手に取ることを止めれば確実に損をする!と断言してしまおう。いきなりネタバレ的なことを書いてしまったが、これは本書の面白さをいささかも減じることはないのでご容赦いただきたい。
とにかく圧倒的に面白く、そして恐ろしい作品である。
今回のコーリーには強力なモチベーションがあるため大いに感情移入することができ、また、「王者のゲーム」「ナイトフォール」で感じられたラストのモヤモヤ感も本作では一切なし。大いなる満足感と共に読み終えることができるのではないかと思う。
それにしても冒頭の「作者はしがき」で、作者個人は「ワイルドファイア」に類似した計画が実在すると信じているし、存在しないのであれば作成されるべきだと考えている、と述べている。もし実在するのであれば・・・なんと恐ろしい時代であることか。あらゆる意味で、我々人類は崖っぷちにいるのかも知れない。
相変わらす白石氏の翻訳は見事の一言。上下巻で軽く千ページを超えるが、一気読み必至の傑作である。