エレベーター、この不思議な空間
★★★★☆
物語の後半に、エレベーターの話が出てくる。
犯人は顔を隠すために、
帽子をかぶり眼鏡をかけてエレベーターに乗った。
普通はその格好だと、変装しているようでかえって目立つ場合が多い。
ところが、そのマンションの4階に、
最近ゲイ・ボーイの秘密クラブが出来たという。
そのクラブに通って来る人たちも、
人目をはばかってそういう格好をしてくる人が多いので、
それほど目立たなかったというのだ。
なるほど、と思った。
エレベーターというのは一種独特な空間で、
自分が乗っている時に誰かが乗り合わせれば必ず顔を見てしまう。
移動中は決して外に出る事が出来ないので、
その間は軽い緊張が走る。
秘密クラブに出入りする人たちと殺人を犯す為に来訪した人。
目的は違うけれど、非日常的な場所へと足を運ぶという点では同じで、
独特な空間の中で、更に異様な空気を醸し出していたに違いない。
物語のラストは、意外な結末であったと言っていいと思う。
結局彼は、溢れるほどの才能を持ちながらも、
最後はさんざん利用してきた『女』に『足を引っ張られた』
という事になるのだろう。