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日本思想史ハンドブック (ハンドブック・シリーズ)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新書館
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手元に置きたい素晴らしい参考書 ★★★★☆
日本思想史の入門書。概説的に章を分けて書かれているタイプの本ではない。一つの項目が2ページまたは4ページで次々と書かれている。様々な著者が、それぞれの専門分野に応じて項目を担当している。また最初に置かれた「日本思想史のきりくち」は、面白い視点を提供しており、一読の価値がある。そして最後にあるブックガイドは多くの本が紹介されている。その中には隠れた名著や、人によって評価の分かれる論争的な本も含まれている。単なる学会の通説を押しつけるものではない。

このような入門書はそれぞれの時代から限定的にトピックを拾う。だから、人によっては不満の残る選択ともなるだろう。編者がみずから挙げているように、古代・中世の項目が少ないこと、「明治維新」「日本国憲法」といった重大な項目がないこと、が目に付く。その他でも、全体的に政治思想に偏りがちであることが気になる。さらに、「まえがき」で新渡戸稲造の『武士道』を本当の武士道と考えてしまうことや、政治の「まつりごと」とお祭りの「まつりごと」の混合に対してため息をつくなら、きちんと項目を挙げて批判してほしかった。また、多数の著者が参加しているため、記事によっては質の違いがあることも確かである。

だが項目ごとにここまで簡潔にまとめられた入門書は珍しい。少し知識のある分野でも、自らの知識の整理に役立つ。日本思想の各分野に対する手軽な入門書として、見知らぬ分野へと誘ってくれるだろう。豊富な文献情報が知的興味を次から次へとかき立てる。新しい世界の存在をかいま見させてくれる本である。
文章がむつかしい入門書 ★★★☆☆
文体について一言。入門書ではあるが、書かれている日本語は入門ではなく、かなりむつかしい。いつ頃から、このようなむつかしい日本語で、読みやすいはずの入門書を書くという習慣が出来上がったのだろうか。内容は盛りだくさんでも、それを表現する文章がむつかしくては、入門書とは言えないように思えるのだが。これは、思想史というどちらかというと、むつかしくなりがちな分野のせいであろうか。どうも違うような気がする。簡単なことがらでも、むつかしく書かないと文章ではないと思い込んでいる人たちの案内であるから、むつかしくなるのであろう。これでは、二重の労苦を読者に強いることになるが、いかがであろうか。
日本思想史の今 ★★★★★
日本思想の各時代ごとの研究状況や最新の問題意識を一覧するのに、非常によい本であると思う。多様な執筆者の起用により、おもしろいことを書く(主に若手の)執筆者を発見できたのは喜ばしかったし、また巻末のブックガイドに加え、本文中に取り上げられる近年の重要な研究書の紹介が魅力的で、色々と読んでみたくなった。
ただし、編者の関心を反映してか、時代としては前近代よりは近世末から近現代に重点がおかれ、また取り上げられる「思想」の性格も、親鸞の人間観や西田幾多郎の哲学がどうこうといったことよりも、何らかのかたちで「国家」や「権力」との関わりが問われる政治思想的な色合いが強い、という「偏向」は否めない。
むろん、まさにそうした方向への傾きこそが、現在の日本思想史研究の全体的なトレンドを反映しているのであって、本書の意図を考慮すれば、その「偏向」は、むしろメリットなのであるが。
「日本思想史」の画期的入門書 ★★★★★
ともに1965年生の編者によってまとめられた日本思想史の入門書。日本思想史は、特定の思想・宗教にとらわれず、日本に展開した思想を歴史的に取り扱って研究するが、この分野でこうした一般向けないし研究の手引書が出版されたのは初めてではないだろうか? 充実した内容と丁寧な構成で、広くおすすめできる本に仕上がっている。

執筆者も多数が1960〜70年代生で、「日本」や「思想」を語る言葉がようやく古臭い枠組みを脱して更新されたと感じる。ミネルヴァ書房の『概説日本思想史』が詳細に書き込まれた大学教科書レベルなのに対して、この本は最新の研究成果を盛り込みつつ、このシリーズの2〜4ページのテーマ記事形式により、誰でも手軽に読み進められるようになっている。

しかも、時代ごと(古代・中世/近世/19世紀/20世紀)のテーマ記事だけでなく、冒頭に「日本思想史の切り口」という記事を7本置いて、通時代的に思想史を読み解いているのが意欲的だし、学問としての面白さを伝えている。

また、編者2人が64冊の「ブックガイド」を執筆しているが、記事との重複を避けながら、堅実な学術書はもちろん、山本七平や梅原猛、見落としがちな名著や科学史までカバーしている。私も世代が近い人間として読書歴の共通性を感じるし、学問的な誠実さ、研究者としての良心が伝わってくる。

むろん残された課題はあるが、それは日本思想史全体に関わるし、編者自身もそれについて触れている。例えば、京都を中心とした文化圏の中世後期以来の「心」を磨く学問伝統と徂徠学との衝突(p93)、などについてである。私見では、そこに「朝鮮心学」(p101)や、近世後期の「理学」の展開という筋道を補強することで、近世〜19世紀の思想史研究は厚みを加えることができると考えるが、今後の研究の進展が待たれるところである。

こうした良書の出版が研究の機運を盛り上げてくれることを切に望む。