ここには当時の慣習の犠牲者たちや運動のことがすべて出てくる。たとえば、フェミニストの苦難(「Woman Is the Nigger of the World(女は世界の奴隷か!)」)、アメリカの不正(「John Sinclair」、「Born in a Prison」、「Attica State)、アイルランド人問題(「Sunday Bloody Sunday(血まみれの日曜日)」、「Luck of the Irish」)などだ。その結果、退屈で聴き苦しいアルバムになってしまった。
ジョン率いるプラスティック・オノ・バンドの優秀なサイドマンたち(ビリー・プレストン、ニッキー・ホプキンス、クラウス・フォアマン、エリック・クラプトン、ジム・ケルトナー)を大々的にフィーチャーし、伝説のプロデューサー、フィル・スペクターを総指揮にあたらせたにもかかわらず、大演説を支えるだけのジョンらしい大胆さや英知がセッション中1度も感じられないのだ。ジョンという人物のある側面を知るうえでは貴重な記録だが、アルバムというよりは風刺のトレーニングと言った方が良さそうな内容だ。(Jerry McCulley, Amazon.com)