はじめて、心底手元に置いて生涯座右の書としたいと思った本でした。
ものづくりを志す人にとって何度も読み返す珠玉の本となると思います。
しかし実はものをつくるということも超えていて、ひとがなにを美とするかという根源的な問いかけは、二元的な世の中を超えようとする跳躍を感じ、志しを感じます。美を入り口としていますが、実はもっと広大で深遠な内容に思われます。
般若心経のような仏教的な理解の上で読まないとむつかしくもあるかもしれませんが、とても21世紀的でもあり、新しいです。
読む人が読む時期によって受け取り方が深まり、自分の浅さや深まりを感じるバロメーターにもなるかもしれません。どのページを開いても深まっている時なら啓示的です。それはたぶん不二の美というものが常識を超えた普遍的なものであるからかもしれません。ですから例えば民芸の美を理解できない場合には、この本はピンとこないかもしれません。
「不二の美」
醜でもなく、美でもないものです。
美と醜がまだ分かれない前のものです。
美と醜が互に即してしまうものです。
反面に醜のない美それ自らのものです。
(本文より)